「3年ぶりの開催」――。イベントの再開で、この言葉が多く聞かれた2022年。ロシアのウクライナ侵攻や物価高騰等のニュースが続く中で、市内ではアート・スポーツなどの分野で連携・発信の多い年だった。紙面で紹介した記事から、横須賀の1年を振り返る。
市 政
コロナ禍による大きな環境変化を受け、行政のデジタル化が喫緊の課題となる中、横須賀市はデジタルガバメント(行政DX)を加速させている。住民異動手続きなどの簡素化を目的に導入した「書かない窓口」の取り組みが、国主催の「夏のDigi田(でん) 甲子園」実装部門ベスト4に選ばれた。死亡届提出後の各種事務手続きをサポートする「おくやみの窓口」も新設しており、非接触での対応や窓口の混雑緩和、職員の負担軽減など他の自治体からも取り組みが注目されている。
ロシアのウクライナ侵攻や円安など、世界情勢の影響で物価上昇が止まらない中、市は補正予算を組んで対応。低所得者への給付や交通事業者への燃料代補助のほか、給食費据え置きのための予算を計上した。
市の公共施設再編にも動きがあった。市内14の青少年の家(みんなの家)のうち7カ所が23年度に廃止することを受け、各施設で説明会が行われた。追浜では市民サービス窓口の役所屋追浜店が9月に閉店。追浜町3丁目で進んでいる再開発事業に関連して、新たに建設する駅前複合ビルに、北図書館(夏島町)が移転することが発表された。
人口減少や施設老朽化などに伴う学校施設適正規模・適正配置に向けた議論が始まっている。田浦と走水・馬堀の学区では5月から「地域別小中学校教育環境整備検討協議会」を立ち上げ、現状の聞き取りのほか統廃合の手法について意見が交わされている。
現在、遊休地になっている大矢部弾庫跡地の活用では、5月からマーケットサウンディング(市場調査)を実施。市は12月議会で、都市公園として整備する考えを明らかにしており、国からの移管手続き等を早急に進めていくという。
市への「企業版ふるさと納税」を活用した官民の取り組みも活発だった。今年は、スポーツ巡回教室の実施やeスポーツ・アーバンスポーツの振興支援、よこすか海岸通りのストリートキャンバス事業、人工芝ごみのアップサイクル事業、海洋技術支援などへの寄附があり、市の課題解決や専門的な知識・ノウハウの共有が期待されている。
市議会の立案による「子どもの権利を守る条例」が3月に制定された。いじめ・虐待等の問題やひとり親家庭への支援などにも言及し、子どもの権利と大人の責務を条文化。7月から施行している。
2025年に上町から神明町に移転する市立病院に関して、名称が一般公募され「横須賀市立総合医療センター」と名付けられた。また、うわまち病院の跡地活用については、南館建物に医療・看護系大学を誘致する計画を示している。
来年4月の統一地方選を前に、県議会・市議会の定数変更があった。県議会は1減の4、市議会は1減の39で県議選は4月9日、市議選は4月23日に投開票となる。
経済・産業
コロナ禍で停滞した地域経済を再興させるため、官民でさまざまな動きがあった。
横須賀商工会議所は、7月に市内を拠点に活動する会員企業が出展する「よこすか産業フェス」を初開催。廃止となった市の「産業まつり」の後継イベントとして継続実施していく考え。
食品スーパー「業務スーパー」を全国で展開している株式会社神戸物産が、新たな製造拠点をYRPに開設することが明らかになった。
フードデリバリーなどで知られる「Uber」と連携したタクシー配車システム「Uber Taxi」を市内事業者5社が6月から導入。インバウンド需要の取り込みを狙う。
若松町1丁目地区、横須賀中央駅前「プライム」一帯の再開発事業が明らかになった。低層階に商業施設、中高層階はホテルと住居の複合ビルで、28年に竣工予定。
市内での消費喚起のための「プレミアム商品券」事業が市と商店街で実施された。市の商品券にはリサイクル可能な新素材「LIMEX」を使用。「地域経済活性化×環境啓発」の取り組みも注目されている。
その「LIMEX」を手掛ける株式会社TBMは11月、神明町にリサイクルプラントを竣工。同社は3月に横須賀市とプラ回収や再生利用に関する連携を交わしており、CO2排出削減など環境への取り組みも進める。
横須賀・三浦半島の「食」をテーマにした観光と物販の拠点施設「いちご よこすかポートマーケット」が10月にリニューアルオープンした。19年の閉店から3年、新たな事業者を迎え、「食の発信基地」として再出発。店内飲食スペースを拡大し、観光客を取り込んでいく。
浦賀ドックを中心とした観光振興事業「MEGURUProject」が産業観光まちづくり賞で観光庁長官賞に選ばれた。今年は11月・12月に行われ、ドック内でのライブやガイドツアーなど、多彩なコンテンツが提供された。
「長井海の手公園ソレイユの丘」が、指定管理事業者の変更を受けて、10月から休園している。新たな管理者(エリアマネジメント横須賀共同事業体)が園内の改修工事を行っており、来年4月にオープンする。
地 域
ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、市内でも同国への支援活動が行われた。地元企業の声掛けによる募金活動や避難民が母国の料理を振る舞うイベントも企画された。
20年10月、久里浜に移転した「浦賀警察署」の名称が来年4月、「横須賀南署」に変更される見通しであることが明らかになった。地名と異なるため住民から「分かりにくい」との声があったことなどを受けたもの。
インドネシアからの技能実習生の受け入れを進める市内の介護事業者が、4月にイスラム教礼拝所併設の拠点「HARAPAN」を立ち上げた。実習生の生活支援だけでなく、介護業界の情報発信、地域交流の場としても機能させていく。
北久里浜駅前から横須賀工業高前まで約1Kmのメインストリートの愛称が「きたくりハナミズキ通り」に決まった。北久里浜商店街振興組合が募集し、応募総数2187件の中から選ばれた。
久里浜1丁目に整備されているサッカー横浜F・マリノスの練習場が来年1月に稼働することに関連して、JR久里浜駅から京急久里浜駅西口を通る市道に「久里浜F・マリノス通り」の愛称が名付けられた。通りには、マリノスの「トリコロールカラー」の街灯も取り付けられた。
スポーツ
アーバンスポーツのひとつ、「eスポーツ」のプロチーム、「BC SWELL」が3月、西逸見町の市の遊休施設を改修した住居に入居。谷戸活性化事業の一環で新スポーツによる地域交流も期待されている。
7月にうみかぜ公園で実施されたのがBMXの全国大会。同公園内への「BMXパーク」開設(10月)やプロライダーによる市内小学校の訪問、ストリートダンスの全国大会誘致など「アーバンスポーツの聖地」に向けて取り組みを加速している。
11月、3年ぶりの開催となったのが、ウインドサーフィンワールドカップ。市内に研究拠点のあるNTTのIoT技術などを用いた新たな観戦スタイルも披露された。
シニア世代のスポーツ・文化交流大会「ねんりんピック」が11月に県内で開かれ、横須賀は卓球種目の会場に。軟式野球で県代表として出場した「横須賀シニア」がブロック別で優勝した。
ジュニア世代ではソフトボールの市内小学生男子選抜チームが全国大会で優勝。中学女子チーム「横須賀ゴールドウェーブ」も全国大会の出場を果たすなど「ソフトの横須賀」を印象付けた。
軟式野球では、三浦学苑高校が南関東大会を制して全国へ。準決勝まで勝ち上がり、ベスト4の結果を残した。
個人競技では、アーチェリーの大貫渉さん(サガミ所属)が全日本フィールド選手権大会で優勝。ワールドゲームズ(7月)と世界選手権(10月)に出場した。
歴史・アート
NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』に関連した企画も盛況だった。衣笠商店街では「三浦一族」をテーマに歴史クイズラリーやワークショップ・展示のほか、コラボグルメなどの企画で賑わった。
横須賀美術館で開かれた「運慶展」には、開館15年間で歴代3位となる約5万人が来場。館内での能楽公演や座禅会、流鏑馬体験、トークイベントなど従来の美術館展示の枠組みを超えたユニークな取り組みが集客を後押しした。会期中の「スカジャン展」は市外からの来訪も多く、話題になっている。
「猿島」の魅力を発信する多様な取り組みも注目されている。短編映画の制作や「ナイトミュージアム」と銘打った音楽ライブ、日没後のロケーションを活用した芸術祭「センスアイランド」など、市外からの若い世代を呼び込んでいる。
平成町のよこすか海岸通りをアートで彩る活動も本格化。大学の美術部学生、福祉事業所の利用者などが手掛けた「ウォールアート」設置のほか、若い世代の表現の場として音楽やダンスを披露するイベント「コーストパフォーマンス」も定期開催されている。
子育て・教育
市立諏訪幼稚園が3月末に閉園。その跡地に23年4月、日本語の指導が必要な児童生徒、保護者のための拠点「日本語支援ステーション」を開所する。もうひとつの市立園、大楠幼稚園については24年度末で廃園とすることが明らかになった。
市役所では偶数月最終水曜日を「ピンクシャツデー」と制定。いじめ防止のテーマカラーとしてピンクの衣服や小物を身に着けてPR、市内の企業や団体にも賛同を呼びかけている。
地域住民らによる「私設図書館」の取り組みも広がった。8月に「船越小学校徒歩1分図書館(フナイチ)」、10月には「津久井浜団地徒歩0分図書館(ツクマル)」が開設。親子・子ども・若者の地域の居場所づくりと空き店舗や空き室の活用の課題解決に取り組んでいる。
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