"海の隼"をあるく 〜按針が見たニッポン〜16 江戸編(1)作・藤野浩章
「わたしはトクガワを信じる。ただし、彼が勝った場合に限るだろうが」(第三章)
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ようやく江戸城が見渡せる高台にたどり着くと、「山賊の巣窟(そうくつ)さながら」の城らしいものが見えた。本書では、簡素な城に驚く一行に角倉(すみのくら)了以(りょうい)が笑いながら答え、家康が関東八州を得てから最初に着手したのが水路の開削や町の造成であったことを語っている。まず国土を整えてから産業を盛んにする、という彼の国づくりの基本を知ったアダムスは安心する。そして江戸に居を構えてから十年。ついに家康が天下人となる最大のチャンスが訪れつつあったのだ。
城内で家康はアダムスを上機嫌で迎え、翌日には日比谷の海岸に大砲をズラリと並べて試射を行った。標的は、沖に浮かぶ安宅(あたけ)船。船からの砲撃とだいぶ勝手が違ったが、次々に繰り出される新兵器は家康を満足させるものだった。
その後の"取引"で、家康はそれらの武器に破格の値段をつける。提示された「黄金八千両」とは、いったいどのくらいの価値だったのだろうか。俗にいう「千両役者」の千両は今の一・三億円くらいというから、ざっと十億円余り。これで家康はリーフデ号もろとも買い取ったのだ。「やはり、ヤーパンは黄金の国だったのだ」と乗組員たちはどよめいたが、アダムスは冷静だった。まずは"傭兵(ようへい)"として家康に勝利をもたらさなければ、帰国どころかすべてが無になってしまうことを誰よりも分かっていただろう。
そしていよいよ、日本での初陣(ういじん)となる地、小山に向かうのだ。
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