まき網漁業を主業とする「豊丸漁業有限会社」(東浦賀)では、自社のいけすを活用したご当地サーモンとサクラマスの海面養殖に挑戦している。漁協関係者の協力を得ながら、生育環境や餌などの試行錯誤を重ねて約1年半。近く試験的に出荷され、早ければ来春を目標に「”横須賀ブランド”として商品化させたい」と意気込んでいる。
同社の福本秀次さんが、父親の健治さんと養殖事業に乗り出したのは、2022年の冬。母港とする鴨居の大室漁港にカツオ漁に使う活イワシのいけすを有しており、「12月から4月上旬のオフシーズン時期に使えないか」と”二毛作”を検討したことがきっかけ。設備の有効活用だけでなく、地球温暖化による魚の分布や漁獲量の変動、若手漁業者の参入・定着、安定した収入源の確保など、漁業が抱える課題の解消をめざし、新しい名産品づくりを通じ、横須賀の水産業振興にもなると考えた。
魚種は国内外で人気の高いサーモンと天然では希少なサクラマスを選んだ。いけすのオフシーズンと養殖時期が重なっていたことや、浦賀湾の入り口に位置する大室漁港の「穏やかな海面も適している」と福本さん。
手順としては、60〜100gほどの稚魚を海水に順応させたのち、海上いけすへ放流。ノルウェー産サーモンなどは4kg前後まで育てるのに対し、福本さんは500〜700gの小ぶりなサイズで出荷する。稚魚は小さい方が安価で仕入れられ、養殖期間も約4カ月と短いことから、より少ない生産コストでの事業展開が可能となり、味も大きいものに遜色ない。「少人数向けの活き造りを提供できたり、活魚の状態で卸せば飲食店のいけすに泳がせて目と舌で楽しんだり。小さいことに付加価値をつけたい」と他のご当地サーモンとの差別化も図る。
名物に育てる
サケ類特有の身の色や脂の乗り、海水への順応など、さまざまな改良を経た今シーズンの目標は「生産から流通までの体制の構築」と福本さん。まもなく出荷時期を迎える約1千匹は、仲買人を通じて飲食店へと試験的に卸され、市場ニーズや消費者の反響などを見るという。今後は生産量の拡大やブランド化に向けた商品名も検討。「徐々に取り組みを大きくして、名物に育てていきたい」と展望を語った。
横須賀市東部漁業協同組合は、成功事例として他の漁業者への横展開を視野に入れるほか、上地克明市長も2月末に行われた横須賀市議会本会議の渡辺光一議員(自民党)の一般質問に対し、「新たな名産となれば横須賀の魅力のアピールにもつながる。意欲ある漁業者の支援を積極的に行っていきたい」と答弁。今後どのような支援が必要になるか意向を聞いた上で検討を進める考えを示した。
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