第2次世界大戦後、本町で駐留米兵らの社交場として機能し、ジャズなどの文化の発信拠点となった「EMクラブ」。その在りし日の姿を3DCGの技術で再現し、動画として残す取り組みを鴨居出身の画家・広瀬順子さん(51)が行っている。現在YouTube上で動画を公開しており、今後も参考写真や資料を収集し、より詳細な描写を施していくとしている。
2022年10月に「1990年に解体された横須賀EMクラブの劇場を立体的に再現」というタイトルでYouTube上に投稿された動画。EMクラブ劇場棟部分を鳥瞰(ちょうかん)し入り口部分へ向かったかと思えば、そのまま館内へ。階段を上り、劇場大広間を見渡したのちに3階客席部に上がる。視聴者はかつての同施設をまるで散策しているような気になれる作品だ。
画家である広瀬さんは故郷である横須賀の風景を描く中で、幼いころの記憶に残るEMクラブの外観を描写した作品を同年4月にツイッター(現X)に投稿。するとフォロワーから建物内部の写真や資料の提供があり、それらをもとに立体データを作成するようになったという。
自身が学生時代に撮りためた写真のほか、図書館で入手した図面データなどを参考に建物の高さ、奥行き、内部の装飾の寸法を割り出して、より実物に近いイメージを作成し、館内ツアーのような動画に仕立てた。その後も資料の収集を続け、定期的に当初作を改良したものを投稿。11月19日現在は建物内の照明の光や反射、壁の微妙な色合いまで再現した作品が公開されている。
幼き好奇心赴くままに
制作の原動力となっているのは「子どもの頃の好奇心」。本町の国道沿いにそびえる威厳のある建物。大人たちは「いーえむくらぶ」と口にするが、その内容や詳細ついて知る人は少なかった。「中には何があるんだろう」。当時の素朴な興味が時を経て芸術家としての手を動かしている。
「懐かしい風景が人々の記憶から消えていってしまうのは寂しい」と広瀬さん。「動画という形に残すことで記憶をつなぎ、当時を知らない世代にどう映るのか楽しみ」と話す。
内部の廊下や階段など、細かい部分は資料が少ないため、当時施設に出入りしていた市民や元米兵からの写真提供を求めている。資料の提供は広瀬さんのXアカウント(@treesparrow99)まで。
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