明日10月8日に市文化会館で公演を行う「横須賀市民劇場プロジェクト」の芸術監督 羽賀 義博さん 根岸町在住 62歳
チャレンジは終わらない
○…本番1週間前の稽古場。部屋の中央に腰を下ろし、渋い表情で台本に目を落としている。緊張感が漂う中、演者は芝居を続ける。ふいに両手でパンとたたくと、演技は中断。全員が集合する。「一度整理しましょう」。台詞回しや舞台上での空間のつくり方など段取りを確認する。指をパチンと鳴らして稽古再開。演技指導は時に厳しい口調になることもある。「もっと早く、何でそんなに遅いの」。一人ひとりの個性を見極めながら演出する。幕が上がるまでの残り時間はわずか―。
○…プロジェクトの発足は今から3年前。地元劇団から、自身も含めた3人が中心となって立ち上げた。2年前の旗揚げ公演から演出を手掛け、650人の観客を集めた。3回目となる今回。不条理演劇の第一人者として知られる劇作家、別役実氏の『我が師・我が街』を選んだ。「テーマ自体はごくごく普通のことです。昨日の生活が今日明日につながるということ。こちらから教訓を強制するのではなく、観た方が考えるきっかけになれば」。
○…演劇の世界に飛び込んだのは19歳の時。先輩の手伝いで、今も市内で活躍する「劇団河童座」に入ったのが最初だった。当時から表舞台でスポットライトを浴びる演者ではなく、裏方を好んだ。とりわけ演出は、役者の成長を間近で見られる。「トントントンと芽が伸びる時」が一番の醍醐味だという。これまで関わった演目は30に上るが「今回ほど時間が足りず駄目だと思ったことは無いですね」と冗談めかして笑う。
○…本業は市文化会館の劇場管理。舞台照明などを担当する現場のプロだ。余談で演劇や舞台以外の趣味を尋ねたが、それは愚問だった。「趣味は仕事です」とキッパリ。プロジェクトでは今後、ミュージカルなど他ジャンルとのコラボも企画している。「5年後、10年後にどういう評価を受けるのか」。先を見据えるその目は、チャレンジ精神に溢れている。
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