「菊名あめや踊り保存会」メンバーで、次世代継承に尽力する 池田 絹代さん 菊名在住 53歳
絶やさぬ伝統、一心に
○…菊名地区で古くから演じられてきた「あめや踊り」。保存会メンバーの高齢化や継承者不足で89年から約20年間途絶えていた郷土芸能が復活を果たして今年で9年目を迎える。「今やらなければ、二度と出来なくなる」。常に危機感を募らせては自らを鼓舞する。踊り手の1人だった亡き父の思いを継ぎ、次世代へと伝えることが課せられた使命。目前に迫った本番に自然と気迫が溢れてくる。
○…祖母の影響で幼い頃始めた新舞踊。仕事や家事の合間を縫って稽古を続けるうちに、地域へ還元する方法はないかと思案するように。「そう言えば」あめや踊りの存在を思い出したのはそんな折だった。その後、思いを同じくした地元女性らと保存会へ復活をかけ合うも、古くからの慣例は女人禁制。最初は「何を馬鹿なことを」とまるで相手にされなかったというが、小さな村の伝統を末永く残したいとの熱意が伝わり、賛同を得ることができた。
○…「死ぬまでもう見ることができないと思っていた」。夢中になって演じきった復活の舞台を泣いて喜ぶ高齢女性の姿を見た時、言い難い喜びに包まれたのを覚えている。と同時に、あめや踊りの行く末を案じていた天国の父へ親孝行ができた気がした。「これからも応援してくれる家族に、一緒に頑張ってくれる仲間に、楽しみに見に来てくれるお客さんに感謝の気持ちを伝えながら演じていけたら」と決意を強くした。
○…人員も資金も正直言って苦しい。衣装や道具は出来る限り自作し、子どもの踊り手を募るために、地域の家々を1軒ずつ歩いて回ったこともあった。なぜそこまでして、一地域行事に力を注ぐのか。原動力を問えば「幕が開いてお客さんが笑い、一体となって盛り上がる瞬間が好きで」と相好を崩す。市内の他地区と違い、例大祭のない菊名にとって地域の絆を繋ぐ貴重な伝統。「受け継ぐことで1年に一度、かつてのようににぎわう日になれば」