地震、台風、土砂、津波など自然災害が頻発する近年の日本列島。自然の脅威と向き合いながら、自治体による災害に強い人づくり・街づくり・体制づくりが急務となっている。
三浦市では今年5月から、元自衛官の高橋栄(ひで)行(ゆき)さん(55/原町在住)を防災課地域防災担当課長として初めて起用。新たな役職を設け、地域防災力の向上をめざしている。
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地域防災担当課長のおもな業務は、自衛隊との密な連携や情報交換、防災訓練の計画・実施・分析、非常時の災害対策本部の立ち上げや運営に関わる助言と多岐にわたる。いわば、「防災や危機管理におけるスペシャリスト」だ。
高橋さんは高校卒業後、知人のすすめで陸上自衛隊に入隊した。横須賀市の武山駐屯地に拠点を置く第31普通科連隊をはじめ、静岡や福岡、埼玉などへ赴任。今年4月に退官するまでの36年を勤め上げ、「地域防災マネージャー」の資格を取得した。
行政職員は人事異動があり、防災意識の高い人材の育成や知識の定着が難しいのが現状。「私のノウハウをいかせるところはたくさんあると思う」
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東日本大震災では、茨城県北部に派遣。避難所で給水や給食、物資の輸送などの支援活動を行った。比較的被害の少ない地域ではあったが、家屋は倒壊し断水が続いていた。地震の恐怖、先が見えない不安、物資の乏しい不便な生活―。避難所には殺伐とした空気も漂い、関係機関の情報収集と伝達方法に歯がゆさもあったと振り返る。現在、三浦市内では行政・消防・警察・陸上自衛隊が大規模災害に備え、情報の一元化や連携強化を図る「危機対策機関連絡協議会」を組織。関係構築は一歩ずつ前進している。
一方、市民レベルではどうか。たとえば、地域役員らによる避難所の「運営」訓練は定期的に行われているものの、住民を巻き込んだ「体験」訓練の実施例はまだ少ないと、その必要性を訴えた。
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任期は3年だが、実は8年ほど前に三浦市へ住まいを移し、市民のひとりとしても災害に強いまちづくりに貢献したいとの思いがある。近年では、多くの死傷者が出た甚大な災害こそ発生していないが、「だからこそ日ごろの備えが大切」と語気を強める。土砂崩れ、浸水、高潮、津波、地震、それらに付随する建物の倒壊やライフラインの被害など想定し得る事象は数多い。
また、半島の先端という地形や高齢化率が約38%という高齢者を多く抱える地域性など、三浦市独自の地域防災体制の整備強化も今後、さらに重要となってくる。「市民のみなさんと一緒にやっていけたら」。一人ひとりの防災意識の向上を呼びかけ、「安全安心のために全力を尽くしたい」と誓った。
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