國學院大學の教授で「まちづくりプランナー」として活動する 椎原 晶子さん 高円坊出身 59歳
古き良きまちに再び光
○…建築物や町並み、コミュニティ再生を専門とする大学教授を務める傍ら、まちの歴史を守り伝える活動に取り組む。ニナイテカレッジでは、市民から「まちのいいとこ」を募集。オリジナルコースを歩き、交流を深めた。「案内役は三浦に誇りを持つ方ばかりで、人材の豊かさを感じた」
○…鎌倉で生まれ、3歳で三浦へ。「小高い丘の上からは海が一望でき、陽光を遮るものがなく、まるで『大草原の小さな家』だった」。物心ついた頃から絵を描くのが好きで、東京藝術大学に進み、上石神井の寮に住んだ。時代はバブル前夜。東京は煌めいて見えた一方で、「新しい場所が良しとされ、自然豊かな故郷が恥ずかしい」というジレンマに陥った。ある日、建築を学ぶ友人との会話ではっとした。「環境は誰かが作っているんだ。私にもできないか。都会にも田舎にも素晴らしい文化がある」。そんなモノローグが頭をよぎり、環境デザインの道を歩み始めた。
○…「古くていい場所を教えて下さい」が、住民と交わす決まり文句。20年ほど前にNPO法人たいとう歴史都市研究会を立ち上げた。ノスタルジックな雰囲気を醸し出す谷中界隈に佇む明治・大正・昭和の家屋を住まいや店舗、アート活動の拠点にリノベ。精彩を失ったまちを再び蘇らせた。「家主と歩を合わせるように年を重ね、刻まれた歴史は全て光る宝石」と目を輝かせる。
○…かつて過ごした高円坊の建物を「みんなの実家」と呼び、草刈りやBBQを楽しみながら、土地の温かみを知れる場として知人に提供している。「三浦に移住者が増えたけれど、元々いる人に溶け込む術がないと聞く。たくさんの人が関わることで、まちに活気をもたらせれば」。オープンな心が未来を創る。