三崎朝市協同組合の理事長を務める 立川 哲夫さん 松輪在住 51歳
伝統と遊び心で進化
○…三崎港そばで、1989年から毎週日曜に開かれている三崎朝市。午前5時から8時30分まで、マグロや地魚、水産加工品、野菜、生花といった各店自慢の商品がずらりと並ぶ。店主の高齢化や店舗数の減少など課題はあるが、最近では蜂蜜屋の出店や犬の譲渡会が人気となり、明るい兆しもある。「新しい店やお客さんを獲得するため、他の催しにも積極的に参加して様々な人と交流している。昔の活気を取り戻すのが私の役目」と瞳に光を宿らせる。
○…3人きょうだいの次男として生まれ、鮪問屋(有)小山商店(岬陽町)を営む父・雅文さんの背中を見て育った。「お得意先さんの寿司が食べたくて、夏休みは配送について行った。小学校の文集には『料理人になりたい』と書いた」と懐かしむ。高校卒業後、自動車販売会社、大楠漁港で働いた後、21歳の時に家業を継いだ。「初めは脂が少なかったり、色が悪かったりして、マグロの目利きを失敗したこともあった」と振り返りつつ、「でも自分が買った魚で勝負できるのが仕事のやりがい」と誇らしげに語る。ずっと出店していた朝市は、コロナ禍で休業した時期もあった。絶望に打ちひしがれ、気づけば商店の前にテントを立て、マグロを販売していた。「この味を待っている人がいるかもしれない」という思いのみが両足を支えていた。
○…大学生の息子2人がいる父であり、釣りやゴルフ、バイク、サバイバルゲームなど、アウトドアな趣味を大切にする。三崎の魅力は「皆、人懐っこいところ。やっぱり三崎弁は楽だね」と笑い、朝市ではキッチンカーイベントも計画中。「買う買わないは二の次。遊び心を持って、とにかくお客さんに楽しんでもらいたい」。好奇心で未来を創造していく。