三浦消防署の署長を務める 塚越 克己さん 横須賀市津久井在住 60歳
無事全うしたい消防人生
○…総勢57人の職員を牽引するトップは還暦を迎え、今年3月で長い消防人生に幕を閉じる。その分、きょう1月5日に実施される出初式には、並々ならぬ思いがある。「一人でも多くの市民に消防職員や消防団員の勇姿を目に焼きつけてほしい」と感慨深げに語る。
○…三崎・入舩区で生まれ育った。専門学校卒業後、大手電機メーカーの代理店でサービスエンジニアとして働いたが、地元を離れてみると「三浦に貢献したい」との思いが不思議と込み上げた。そんな折、消防士募集の張り紙を見た。「体力には自信があったから」と三浦市消防本部の門を叩き、救助隊1期生とし活動。阪神・淡路大震災発生時には現地へ。6千人以上もの尊い命を奪った惨劇は「想像を絶するものだった」と表情を曇らせる。この経験から「マンパワーの重要性」が教訓となった。横須賀市との消防広域化から7年。「消防力は強化できた」と実感する一方で、市消防本部の名がなくなることに寂しさを抱き、神輿会「三纏志會(みてんしかい)」を結成。「三浦消防で火消しを志した者たち」の意味を込めた。自身が顧問となり、海南神社例大祭や木遣りみこしパレードに参加。担ぎ手の助っ人として、消防関係者約30人が日ごろ鍛えた筋力を発揮した。また万が一のケガに備え、救急救命士らによる応急処置ができる体制も整えている。
○…海を見ながら毎朝コーヒーを飲むこと、若い頃に痛めた古傷を癒す温泉旅行が息抜き。結婚して30年間、不規則な生活を支えた妻に感謝する。「何度も危険な目に遭った。大切な仲間も亡くした。サイレンが鳴る度、皆が生きて帰ってくることだけを願ってきた」と回想し、「最後まで健康に、いや無事に任務を全うできれば私は幸せ」と笑みをこぼした。