「そうそう、笑顔の多い人だった」。三崎で和菓子店を営む秋本清道さん(73)は古い紙面に目を落とし、こう呟いた。
豊漁・豊作、海上安全、商売繁盛を祈願し、1月15日の小正月に行われる伝統行事「チャッキラコ」。それをまとめる保存会の会長だったのが高木巌さんだ。衣料品店「やなぎや」(天神町)の代表でもあり、人とのふれあいを大切にする店舗運営を心掛けていた。
「子どもの頃からの付き合いよ。下町でケンカが始まると『まあまあ』なんて、ニコニコしながら間に入って。すると不思議なもんで、みんな黙っちゃう。得な人だね」。ほんのり切ない表情を浮かべた秋本さんは、胸中で思い出を反芻しているようだった。
現在、保存会の会長は秋本さんが務める。「あなたたちが今踊れば、50年、100年と歴史がまた続いていく。胸を張って」。ユネスコ無形文化遺産(風流踊)に登録された際、子どもたちに呼び掛けたメッセージだ。
職人としての仕事の傍ら、三浦商工会議所の副会頭としての顔を併せ持つ慌ただしい毎日を過ごしながらも、脈々と受け継がれてきた光輝ある郷土文化を守ろうと尽力。『チャッキラコの舞』と名付けた焼菓子を販売するほか、近年では日本青年館で開かれた全国民俗芸能大会に出演するなど活躍の幅を広げている。
「文化の灯を絶やしちゃならないが、背伸びせず、地道にコツコツ続けていかないと。そうですよね、高木先輩」。その目には、じんわりと込み上げるものがあった。
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