春の叙勲で旭日双光章に選ばれた 鈴木 清さん 松輪在住 72歳
”海業”に終わりはない
○…漁業経営の安定を目的に、不漁によって漁獲高が減少した場合の損失を補償するなど、国や都道府県が後ろ盾となる共済制度を推進する全国合同漁業共済組合の副組合長理事を務める。その功績を内閣府から称えられ、市内から唯一、春の叙勲で旭日双光章に選ばれた。「栄誉ある勲章をいただけるなんて夢にも思わなかった。感無量」と、日章を中心に光線を配した旭光のデザインを改めてじっと見つめた。
○…松輪の漁師家系に生まれた。6人きょうだいの次男で、幼い頃から海を遊び場にしていた。中学卒業後に上京。職人を目指し、パン加工場や菓子店で働いたが、「人に使われるのは、どうも苦手で」と20代半ばで地元に戻ってきた。漁師を継ぐためだった。延縄漁師の父・幸吉さんや先輩漁師たちは、持てるスキルを惜しみなく授けてくれた。その後、独立。若手漁業者グループのリーダー格として活躍し、いつしか素潜りでは右に出る者はいない名人となっていた。自身の名を冠した愛船「清丸」で、アワビやサザエ、伊勢海老を獲る日々。「天職だと思う」と感慨深げだ。
○…みうら漁業同組合業の組合長など、肩書きは10できかない。いつも手帳は真っ黒。「漁に出たいけれど、なかなか。朝、頭の中で『今日は右か』なんて考えてね。勘が当たった時は最高」。一方、海水温の上昇で生態系が崩れ、北海道ではサケではなくブリが獲れるなど、漁業を取り巻く環境の変化に危機感も抱く。「今儲けなければ意味がない」。荷上げ場や冷蔵庫置き場だった漁業用地を、釣り客が利用する駐車場に切り替え。市で整備し、組合が管理する仕組みで、安定した収入を得られる。「新しいことに挑戦しなければならない時代。”海業”に終わりはない」