公益社団法人「土木学会」が認定する「2018年度土木学会選奨土木遺産」に、油壺験潮場旧建屋(小網代)がこのほど選ばれた。三浦市内では初めての認定。日本の土地の標高を決める原点を担い、明治中期の貴重な遺構であることが評価された。
幕末から1945年頃までの近代土木構造物を中心に、社会や土木技術者へのアピール、まちづくりへの活用、保存をめざして2000年度から始まった認定制度。年に20件ほどが認定され、三浦半島からはこれまで猿島要塞(横須賀市)や小坪隧道・名越隧道(逗子市・鎌倉市)などが選ばれている。
124年の歴史
今回認定を受けたのは、国土交通省国土地理院が管理する油壺湾に面した油壺験潮場のうち、1894(明治27)年に竣工した旧建屋。現存する験潮場としては、宮崎県日向市にある細島験潮場(1893年竣工)に次いで2番目に古いという。
床面積7・36平方メートルの平屋建て。瓦葺の屋根に焼過ぎ煉瓦によるイギリス積みの外壁という和洋折衷の外観が目を引き、関東大震災での地盤隆起で基礎部分が海上に露出しているのが特徴。1995年、施設老朽化や観測機器の更新などに伴って隣接する新建屋へ機能移設し、役割を終えるまでの間、海面の昇降(潮位)を観測していた。
受賞理由は「我が国の初期の測量技術を今に伝え、日本の標高の基準である『日本水準原点』の管理に重要な役割を果たしてきた貴重な施設」という点。現在も地殻変動の監視、津波の検出のほか、地球温暖化による海面上昇など防災研究にも役立てられている。
地域資源に期待感
土木遺産認定に向け、国土地理院と協議し推薦を行った三浦市都市計画課は、「市民に広く知ってもらえるいい機会になる。郷土の誇りのひとつになれば嬉しい」と喜びを話す。11月18日(日)に潮風アリーナ周辺で行われる「みうら市民まつり」では、認定証授与式を実施。同施設の詳細をまとめたPRブースも設置し、周知を図る。
また、今後の展開について「歴史的な構造物をめぐるガイドツアーなどに活用できたら」とし、新たな地域資源として期待を込めた。
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