福島第一原発事故の影響で飼い主が不在になり、路頭に迷ってしまった犬の”駆け込み寺”が、湘南国際村の一角にある。「NPO法人神奈川ドッグプロテクション(KDP)」(菊池英隆代表)では震災後、警戒区域内にいた60匹を超える被災犬を保護してきた。KDPでは飼い主の元へ返したり新たな里親へ引き渡したりと、被災犬と家族との橋渡し役を買って出ているが、今も駆け込みは後を絶たず、一部の里親は見つかっていない。犬たちは生れ故郷から遠く離れた地で、新たな家族を待ち続けている。
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菊池さんが福島県入りしたのは震災後の4月。第一原発事故の避難命令で人がいなくなり、家畜やペットが取り残されている現状を報道で知って。「人命救助が第一。ペットの救出はどうしても二の次になる」。もちろん、葛藤はあった。「県内の犬ならいざしらず、他県の事情も知らない自分が出向いていいものか」。飼い主の許可なく犬を連れて行けば被災者とのトラブルになりかねず、場合によっては窃盗とみなされる可能性すらあった。しかし、警戒区域で目にしたのは鎖で繋がれたまま痩せ細った犬や道端に累々と横たわる死骸。「命に待ったはない。助けなければ」その思いが菊池さんを動かした。これまでに、現地に足を運んだ数はゆうに50回を超える。車に乗せるのは主に路頭に迷う犬や飼い主のケアが行き届いていない犬。大型、小型、ミックス犬など顔ぶれは毎度様々だ。保護した犬はひとまず警察と保健所に報告。その後1年間を目安に国際村内にあるシェルターで預かる。
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犬たちの行く先は2つだ。飼い主と連絡がつき、無事家族のもとへ帰っていく場合。もう一つは飼い主が見つからない、もしくは今後共に暮らせる見込みがなく、新たな飼い主へ引き取られていくケースだ。
後者の場合は、ホームページの告知や譲渡会を通じて犬と新たな家族を引き合わせるが、引渡しには慎重をきたす。飼い主が責任を持って育ててくれるか、経済的余力はあるか、犬との相性はどうか。「長い付き合いになる。時間をかけてでもその子に相応しい家族を探していく」。
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KDPを通じ、これまで約30匹が新たな家族のもとに引き取られていった。人気の高い子犬や小型犬は比較的引き取り手が見つかりやすいが、年齢やしつけの如何などでその逆もある。ミックス犬のモチは原発の20キロ圏内にいるところを保護された。大人しい性格だが10歳を過ぎている上、過去病気を患ったこともネックになりいまだ引き取り手は現れない。シェルターに来て5月で2年になる。現在KDPで預かる被災犬はモチを含む8匹。菊池さんは「震災を乗り越えた犬。この子たちにも新しい家族が見つかってほしい」と願いを込める。被災犬や譲渡会の情報は随時KDPのホームページ上で公開しているほか、個別の相談も受付けている。問合せはKDP松崎さん【携帯電話】090・5329・0289または【メール】cocoon10@live.jpまで。
シェルター運営「KDP」とは
シェルターを運営する神奈川ドッグプロテクション(KDP)は「県内の殺処分犬ゼロ」を目指して5年前に発足。県動物保護センターの承認を受け、飼い主に捨てられ殺処分されそうな犬をシェルターで預かり、新たな里親に紹介している。KDPによると2010年の県内殺処分犬数は450匹にのぼるという。現在約90匹の犬が生活。公的機関の補助はなく、募金と自己資金のみで運営し、世話もわずか数人の職員で手掛ける。随時里親を募集しているほか活動支援金も募っている。http://kdp-satooya.com
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