逗子市がこのほど、民間事業者と共同で法面変異計実証実験と、がけ地崩落予兆抽出の共同研究を開始した。頻発するがけ崩れに対し、IT技術や人工衛星を活用して、地表状態や予兆を把握する手法の確立を目指す。
今月3日の定例会見で桐ケ谷覚市長は、2018年12月の就任以来、20以上の崩落が発生し、昨年は2件の死亡事故も起きたことを踏まえ、「対策は市の最重要課題のひとつ」と強調した。現在、市職員の目視による監視・点検のほか、市民から情報を募る「市民通報メール」を受け付けて危険個所の把握に努めている。
ただ、三方を山に囲まれている逗子では対象となるエリアは広範囲にわたり、職員や協力者の数にも限りがある。そこで市は、先進技術を持つ民間事業者の力を借りて、実証実験と共同研究を5月から始めた。
ALSOKや(株)オサシ・テクノスと行う実証実験では、微弱な電流を流し、地表の変化を検出する傾斜計を設置した。ソニーネットワークコミュニケーションズ(株)とイノベーションファーム(株)が行うのは、高精度水平センサーを使用したもの。イノベーションファーム社は現在、高速道路の橋梁において変位計測を行っており、これを活用して新たな機器を開発した。いずれも異変を察知するとすぐ、担当部署のパソコンや職員のスマホに通知される仕組み。電力消費がわずかで長期に渡る定点観測ができるのが特徴という。
また、より広範囲のエリアを観測するために、地球観測衛星のデータを利用した、がけ地崩落予兆抽出の共同研究をEdafos(株)と行う。12日ごとに送られてくる画像データを分析し、前兆の把握に繋げる。実証実験の検証は10月頃、共同研究の画像解析は8月頃を予定している。
また、アドバイザーには今年3月に協定を結んだ(一社)地盤品質判定士会が就き、得られたデータの評価分析のほか、異常が見られた場合の対応についても助言するという。
行政と先端技術を持つ民間事業者、そして専門家集団の協力体制を構築した逗子市。観測機器の設置には数万円程度の費用で済むことから、「崖地の見回りなど、防災に向けて取り組んでいただいている住民自治協議会や自治会の方々とともに、将来的には自分たちで見守りを行いながら地域の安心安全を守っていく形に結びつけられたら」と桐ケ谷市長は展望を語った。
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