昨年文化勲章を受け、逗子市から市民栄誉賞が贈られる 高橋 睦郎(むつお)さん 逗子市桜山在住 87歳
気取らぬ詩人、一生現役
○…詩人・歌人・俳人として昨年、文化勲章を受章した。「自分が賞にふさわしいのかという思いはあるが、今後の創作活動への励みにはなる」と話す。市民栄誉賞に関しては「嬉しいことだが、顔が知られて悪いことが出来なくなるね」といたずらっぽく笑う。飾らない人柄が印象的だ。
○…中1の時に友人に誘われ文芸部に。そこで『ギリシャラテン抒情詩集』を読み、「ビリビリっと走るものがあった」。詩への目覚めだった。毎日中学生新聞に作品を投稿し続け、入賞の数は群を抜き、知られる存在となった。詩・短歌・俳句全てに興味があり、周りからは八方美人と言われたりもしたが、好きだからどれも続けてきた。「言葉は向こうからやってくる。それを常に受け取る用意が必要。でも大概捉え損なう。その記録が詩集。一生捉え損ないですね」と創作活動を語る。
○…北九州市出身。大学時代に結核を患い、教師になることを諦め上京。先輩のつてで広告関係の仕事をしながら詩を書き続けた。自ら働きかけ、谷川俊太郎に跋文(ばつぶん)を書いてもらった詩集が三島由紀夫に認められるなど、「僕は人に恵まれているんです」と感謝する。一方で長いスランプも経験した。30代はほとんど「書けなかった」。42歳の時、交通事故で入院。病院の天井をずっと眺めるうちに「俺が書かなくても誰も困らない」と思い至り、急に気持ちが楽になったことで再び書けるようになった。
○…縁あって38年前から逗子に居住。故郷の門司も海と山のまちだった。「歩行と思考は密接で、言葉は歩いているときに降ってくる」そうで、逗子海岸があることは「ありがたく、仕事がはかどる」という。蛍の見られる名越緑地や池子の森もお気に入りだ。
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