「石臼そば」店主、チョードリーさん 日本人顔負けの心意気
母国離れ20年、「本当に好きだから」
生まれ育った母国を離れ、和食の世界に身を置く青年が逗子にいる。JR逗子駅西口にほど近い「石臼そば」の店主、M・R・K・チョードリーさん(41)だ。故郷バングラデシュを離れて約20年。「地元の人を大切に、そばを堪能してもらいたい」と2度目に逗子で店を構えて3年になる。
営業前日の午後10時過ぎ。専用の石臼器で翌日使う分のそば粉をひくことから仕事がはじまる。製粉した粉を使用する方が仕事は楽だが「いつ挽いたか分からないものは使いたくない」と手間暇を惜しまない。挽きたて、打ちたて、茹でたて。基本と言われる「3たて」を忠実に守ったそばは香り高く、長年足繁く通うファンも少なくない。大盛りは1・5人前が一般的だが「半分にするとそばが切れる」との理由から丸々2玉を使うなど「いかに美味しく食べてもらうか」に神経を費やす。
そば職人の世界に入ったのは学生時代、留学で日本に訪れた際に口にしたのがきっかけ。スパイスを多く使った母国の料理とは違い、素材の味をシンプルに引き出す和食に興味を持った。「そばは美味しくて、健康にもいい」。その後アルバイトで店を渡り歩き、卒業と同時に本格的に修行を開始。およそ2年間、老舗店でいろはを学んだ。
初めて逗子で店を開いてほどなく、経営が軌道にのり、関内でも出店。昼時には会社員らが行列を作る人気店にまでなったが、東日本大震災で店の入ったビルが耐震に問題にあることが分かり、逗子で再スタートを切ることにした。
人気とはいえ、店には「外国人が打つそば」というイメージが付きまとう。中には先入観からチョードリーさんを見るなり店を出てしまう客もいる。始めはそれが辛かったが今はこう考えるようにしている。「応援してくれる人たちがその何十倍もいる。その人たちのために、頑張ろう」。苦労はあってもこの道を選んだことを後悔したことはない。「本当に好きなことだから。信じて、やっていくだけ」。言葉に迷いはなかった。
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