三浦半島地域で近年、大量のミツバチが突如”失踪”する現象が相次いでいる。昨年は地域内に10軒ある養蜂場のハチほぼ全てが全滅する事態が発生。被害に遭った蜂箱の数は200近くにのぼる。関係者は一部農薬が原因と推測しているが、解決に向けた決定打はないのが現状で苦境にあえいでいる。
働きバチが幼虫や女王バチを残したまま巣に戻らなくなる現象は「蜂群崩壊症候群(CCD)」と呼ばれ、2000年代初頭から日本を始め米国や欧州など世界各国で問題となっている。ダニやウイルス感染、農薬、ストレスなど様々な要因が指摘されているが、正確な原因は特定されていない。
県養蜂組合三浦支部(石井勉支部長)によると、地域内で被害が確認されたのは7年ほど前から。春にいたはずの数万匹のハチが秋には姿を消していたという。同様の現象が毎年のように起こるようになり、昨年は組合員が飼育する計190箱が全滅。葉山町で2代にわたって70年間養蜂を営む石井さん自身も大きな被害を被った。「親の代から数えてもこんなことはなかった」と戸惑いを隠しきれない。今年は町内に組合員のハチをかくまう「緊急避難場所」を作り、同様の事態は免れたが、被害そのものはなくならなかったという。「毎年買い足すことで何とか凌いでいるが、全国的にハチが不足し価格が高騰している。状況が続けばやっていけなくなる」と窮状を明かす。
農薬が影響か
様々な原因が指摘される中、近年広まった農薬(殺虫剤)との関連性を疑う声が浮上している。
ネオニコチノイド系の農薬は少量で長期間持続することで農家や一般家庭でも普及。一方でミツバチなどの益虫にも影響を及ぼす可能性があり、CCDとの因果関係を示す研究結果も発表されている。石井さんも「夏の太陽熱で気化した農薬が南風にのってハチのいる場所まで来ているのではないか」と推測する。被害の多くは8月に集中しており、山間や木の影など南風の当たらない場所では被害が少なかったからだ。だが科学的根拠はないため、現状の対応は農薬の適正利用を呼び掛けるにとどまる。「地道に皆さんの理解を得るしかない。ミツバチがいなくなれば農作物にも影響がでる。私たちの声に耳を傾けてほしい」と話した。
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