逗子市でここ数年来、家庭用生ごみ処理機「キエーロ」の普及台数が急速に伸びている。市の助成金を活用した設置台数は2ケタ台で微増していたが、13年4月に市商工会が市から販売委託を受けるようになってから右肩上がりに増え、昨年度累計で1千台の大台にのった。背景には、逗子ならではの仕掛けがある。
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特徴的なのは、市商工会が購入を希望する市民に代わって面倒な助成金申請や設置手続きを代行すること。希望者は助成金を差し引いた負担額を支払うだけで、手に入れることができる。以前は一度全額負担で購入し、手続きの後に市から助成金が振り込まれるシステムだった。
依頼が増えれば商工会には若干の手間賃が入り、行政としても財政を圧迫するごみ処理費を低減することができる。さらに逗子で販売されているキエーロは東日本大震災で被災した岩手県陸前高田市で作られたもので、普及がそのまま復興支援にもなっている、いわば”四方良し”の仕掛けだ。「我ながらいいスキームができたと思う」。仕掛け人で市商工会長を務める桐ケ谷覚さん(67)はほほ笑む。
震災直後から地元の仲間と精力的に被災地支援に取り組んでいた桐ケ谷さん。翌年、陸前高田市を訪れた折、バスの車窓越しに木々が皆伐された山肌を見て思った。「伐採した木をキエーロ用に製材して、仮設住宅に暮らす人に組み上げてもらえば被災地にお金が落ちるのでは」。折しも逗子でキエーロを普及させるには供給元が必要だった。陸前高田には自分と同じく材木業を営む知人がいて、神奈川への流通ルートもある。ならば商工会が間に入って新しい仕組みを作りあげれば―。この発想がぴたりとはまった。
逗子のモデルは他の自治体からもにわかに注目を集めている。桐ケ谷さんは来月、県商工会長と県知事との懇談会でこれまでの取り組みを発表する予定で「これが県、関東でも成功していずれ全国にも広がったら」と青写真を描く。
大量消費社会とは対極にある、循環型社会の体現者として今や「地球を救う」とまで言われるキエーロ。葉山で誕生し、逗子では普及モデルもできた。全国各地で市民権が得られる日も、そう遠い未来ではないのかもしれない。(了)
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