竜を題材にした作品「頭竜(とうりゅう)」が平成24年用年賀郵便切手のデザインに採用された 相沢伊寛(ただひろ)さん 白旗在住 81歳
新年に響く 魂の音色
○…平成24年用年賀郵便切手の絵柄に、民芸品の土鈴「頭竜」が採用された。この作品は掌サイズの陶製の鈴で、竜の頭部に宝珠が施された正月らしいデザイン。藤沢市内在住者の作品が年賀切手のデザインに採用されたのは今回が初めて。今年の5月に採用が決定、藤沢に窯を作って半世紀以上創り続けてきた結晶だ。
○…「初めは絵が描きたかったんだ」。昭和5年生まれで栃木県出身、実家が窯元だったこともあり、芸術の道を志した。武蔵野美術大学で洋画科を専攻するも、尊敬する父の影響で卒業後は陶芸の道に進む。観光土産として作品を販売するために藤沢へ移り、その後はデパート催事などに数多く出展。その後、西ドイツ招待展など、海外へも出品している。
○…「お客さんに喜んでもらえることが何よりものやりがい」と力を込める。一つひとつ手作りで、1000度近くになる窯と対峙する。焼き上げから色塗りまでを一貫して行うため、1日に1個しか作ることができない。絵描きを目指していた経歴が、色のセンスや組み合わせなどで光る。力強い塗り方と、優しい味のある色合いは、どこか懐かしさを感じさせる。
○…昨年の夏に肺がんが見つかった。今年の8月には手術するも、退院してからまもなく土鈴づくりを再開したという。現在は辰年にちなんだ竜の作品の色付けを行っており、「作り終えるまでは死ねないね」と微笑んだ。
○…スキーが趣味で、数年前まで草津によく滑りに行った。「また元気になって孫と行けたらいいね」と目を細める。物静かに「子授けの神など、生きているうちは作品を創り続けていきたい」と生涯現役を宣言。色の中でも一番好きだという茶色は、奥行きのあり、温かみのある渋い土色だ。そんな温かな竜の音が、切手を通して新年の日本中に鳴り響く。
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