■福島 『陽だまりの彼女』では、江の島の磯での撮影が非常に大変でしたね。
■宇田 潮の満ち引きで、島内の磯に入れる時間や風向きなどの諸条件が重ならないと撮れなかったので、緊張感がありました。足元が濡れていてはいけないということで、波が来た後はキャストもスタッフもモップで拭いたりしてね。それこそ、主演の松本潤さんも上野樹里さんも一緒に荷物を持ったりして。
■福島 事前に干潮・満潮の時間を調べて臨みましたが、風が吹いて延期になったり。藤沢ロケでこだわったところはありますか?
■三木 両作品ともに、回想シーンでは、江の島の灯台はCGで昔の灯台に変えています。小さなこだわりですが、江の島を撮る以上はその時代設定を大切にしたいなと。あと、二人のデートシーンを実際のデートのように楽しく撮りたかった。女夫饅頭を食べたり、江島神社を参拝したり、龍恋の鐘に行ったりと、映画を観終わった後に、同じように楽しんでもらいたい気持ちがあったので。地元の方には、平日の朝6時から仲見世通りの店を開けていただき、大変助かりましたね。
■福島 湘南藤沢FCは02年の設立で、宇田プロデューサーは、01年の映画『ピンポン』でも藤沢で撮影されていますが、FC設立の前後では、何か違いはありましたか?
■宇田 藤沢FCは協力体制が整っていて、撮影を受け入れるスタンスではなく、一緒に作品を作ろうっていう気持ちでいる。ほぼスタッフでしたよね(笑)。ロケ地が県や国の管轄であっても、そこを乗り越えて交渉や手続きなどに動いて下さる。現場の連携がすごい。逗子や横浜など周辺自治体や小田急電鉄さん、警察署に対しても、FCさんが音頭を取って全体会議を開いてくださいました。
■三木 2作品が準グランプリを頂きましたが、FCさんがもらった賞だと思っています。
■山田 ロケ地マップの制作や江の島限定でオリジナルメモ帳の販売も行っていて、制作側と自治体が一緒に盛り上げていこうという姿勢にびっくりしました。ここまで地域が協力的で、長年の蓄積があるのは全国を見てもなかなかありません。こうした仕掛けは好循環となり、全国モデルになると思います。
■福島 撮影3カ月前から宣伝チームも一堂に会して、藤沢で出来ることを一緒に考える時間が持てたことが成功につながったかと。
■三木 あとは、出来上がった作品を通じて地元の方々に喜んでもらうことが大切。映画の寿命が延びるというか、作品の舞台へ行こうと思ってもらったりして、時を経て映画や地域が愛されていく理由になる。
■福島 未だに「映画を見て来た」という人がいると聞き、本当に愛される作品になったと思います。私たちは、制作サイドに「観光地としての江の島」を、絶対に押し付けてはいけないというスタンスでいますが、結果的に使っていただけると知った時は、正直、本当に嬉しかったですね。
■三木 制作側と地域が、お互いのことを少しずつ考えてウインウインになる関係性が理想。映画ロケ地の面白さは、何気ない風景なのに、キャラクターが大事にしている場所だったりすると全然見え方が違うこと。地元の方も「あれっ、こんな面白い場所があったんだ」って気づいたりと、見た人の日常と物語の世界が地続きになる瞬間があります。観光ガイドを見て訪れるものとは違った時間の感覚が得られることが、魅力だと思います。
■福島 撮影時からスタッフや出演者、地元住民、市民エキストラが一致団結していたので、その後の宣伝などでも信頼関係につながり、皆さんが江の島に足を運んでくれる良いロケツーリズムの形になりました。『江の島三部作』としての次回作も期待しています。
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