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藤沢版 公開:2015年3月6日 エリアトップへ

メレンゲ細工の技術を伝えに3月9日、ヨーロッパへ旅立つ 鈴木 廣明さん 湘南台在住 65歳

公開:2015年3月6日

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鈴木 廣明さん

「生きてきた証を残したい」

 ○…卵白を泡立て、砂糖を加えた「メレンゲ」を絞って動物や人、人気キャラクターなどを形作り、焼き固める。メレンゲの起源は1500年ごろの欧州とされるが今、現地でその職人の姿を見ることはほとんどない。「500年経った今も残っている菓子。100年後にはもっと広がっている可能性もある」。若かりしころ、メレンゲと出会った欧州に、今度は磨き上げた自らの技術を伝えに行く。

 ○…和洋菓子店を営む家に長男として生まれた。「建築の仕事をしたかった」と言うが、物心つくころには親から仕事を任され、気づけば菓子職人の道に。22歳の時、周囲の猛反対を押し切って渡欧し、菓子店で働きながら各国を旅した。4年にわたる旅の最後に働いたオーストリア・ウィーンの老舗店。職人が「秘密の部屋で作っていた」物こそ、メレンゲ細工だった。日本では見たことのない菓子。作り方や配合は教えてもらえず帰国後、写真だけを頼りに研究を重ねた。「見本がないから面白かったんだと思う」。以降、メレンゲ細工はライフワークになった。

 ○…30歳最初の日である12月3日に湘南台に開店した洋菓子店「フレイ延齢堂」を昨年、65歳最初の日に閉めた。多彩なメレンゲ細工がずらりと並ぶ店内。名物のザッハトルテが食べられなくなるとあって、惜しむ声も多かったが「聞いていたらやりたいことができなくなっちゃう」と笑顔。思えば35年間、休みはなかった。身体のメンテナンスに家族との時間、後継の育成―やりたいことが溢れた。「生きてきた証を残したい」

 ○…2カ月部屋を借り、縁のあったスイスの菓子店でまずは1週間指導する。昔を思い出し「向こうの人と話しながら仕事をするのは楽しい」と胸を弾ませる。手間と時間がかかるメレンゲ細工。「個性を出したいという強い思いがないと続かないが、やってみたいという人に教え、広がれば」。熱い思いを持つ職人との出会いを夢見て今、旅に出る。
 

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