市民に親しまれてきた湘南台駅東口の書店「文華堂」が4月21日に閉店する。インターネットやスマートフォンの普及で本や雑誌の購買が落ち込み、平成の終わりと共に決意した。店には閉店を惜しむ客が訪れている。
文華堂は、1972年に岩崎盟三さん(78)光子さん(76)夫妻が開業。夫の両親が遊行通りで書店を開業しており、のれん分けした。当時の湘南台駅は、小田急線の各駅停車駅。横浜市営地下鉄や相鉄線の乗り入れが決まると、セットバックがはじまり、畑が姿を消した。「この頃はみんな湘南台に夢を持っていた」と、光子さんは話す。
湘南台駅はその後、1999年に相鉄いずみ野線と横浜市営地下鉄が乗り入れ、2000年には急行の停車駅となった。駅前は開発が進み、夫婦は湘南台の地域振興にも深く関わった。夫婦で商店街の要職を務め、02年から続く商店街の恒例イベントおたのしみ市は、光子さんが自ら企画したイベントだ。
多い時は10万冊を超える書籍があり、特に力を入れてきたのは児童書。「大人が読んでも懐かしいものを」と、幅広く品揃えし、00年から毎月第4土曜日に開催してきた読み聞かせ会は、200回を超えるほどだ。
文房具も販売し、客からの商品のリクエストは、ほとんど答えてきた。「期待に応えたくて発注するから在庫を抱えすぎちゃって」と光子さんは苦笑い。常に顧客を第一に商売をしてきた。今は娘の圭子さん(50)が店を切り盛りする。両親の背中を見て育ち、「小さい時、奥で本を読みながら閉店を待っていた」と創業当時を懐かしむ。
47年の歳月は、開店当時親に連れられて買い物に来ていた子どもが親となり、自分の子を連れて買いにくるようになった。親子3代で、文華堂を訪れる客も少なくない。
地域に愛されてきた書店だが、時代は変わった。光子さんは電車内の風景が変わり始めているのを肌で感じていたという。以前は本を読んでいた人も、今やほとんどの視線の先はスマートフォン。「本を読まない人が多くなったと、年々実感するばかり」と残念そうに語る。
閉店の知らせを店頭に貼ると、「本当に終わっちゃうの」「続けてほしい」と閉店を惜しむ声が多数寄せられた。「お客さんには、感謝の気持ちでいっぱいです」と二人は話した。
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