コロナ禍において、東京都医師会が喫煙と罹患率の関係性に警鐘を鳴らした。喫煙は肺に長期的で回復しにくいダメージを与え、肺炎のリスクを約3倍に高めるという。5月31日は国際禁煙デー。喫煙のリスクについて、藤沢市禁煙支援ネットワークに長年携わる山口邦彦医師と長谷章医師に話を聞いた。
―喫煙の恐ろしさとは
山口:傷口にワサビを塗りつけたい人はいるでしょうか。タバコには約400種の危険物質が含まれ、その内約80種は発癌性物質。依存性はお酒や麻薬よりも高いといわれ、身体への影響はお酒を遥かに上回ります。
傷付いた肺胞は再生しない
―喫煙が身体に与えるダメージとは
山口:様々な部位に影響を与えますが、特に肺に蓄積されたダメージは深刻です。酸素と二酸化炭素の入れ替えを担う肺胞は再生しないため、喫煙する度に肺機能の壊れた状態である肺気腫へ近づいていきます。また気管支炎も同様です。痰の絡む咳に悩む人は少なくないですが、この痰は喫煙が引き起こした炎症を修復しようとする身体の働きですので、どのくらい気管支が壊されているかの目安でもあります。
加熱式タバコも身体・周囲へ影響
―本数減や、「加熱式タバコ」へシフトすればいいのでは
長谷:水に一滴でも絵の具が入れば色が変わってしまうように、量に関わらず身体にダメージを与えます。有害成分カットを謳う加熱式タバコも同様です。加熱式タバコは目に見える煙は出ずとも、有害物質は空気中に漂い、周囲への影響もあります。
喫煙後の息も周囲に悪影響
―受動喫煙の影響は
長谷:副流煙に含まれる化学物質は主流煙と同様の内容ですが、有害物質は低音燃焼の関係で副流煙に多く含まれます。受動喫煙ばかりでなく、喫煙者の呼気の有害物質が衣服、絨毯、カーテン、壁紙などに付着して起こる「三次喫煙」も無視できない問題です。子どもや乳児がそれらを吸い込むと健康被害を受けます。防ぐには分煙でなく「完全禁煙」しか道はないでしょう。
山口:吸った後に吐き出す息にも有害物質が含まれている点も重要です。喫煙後の呼気から有害物質が消えるまでには最低でも45分かかるというデータを産業医大の大和教授は示しています。煙を出さない加熱式タバコも同様です。
―禁煙の道とは
山口:喫煙は「依存症」、病気です。ストレス発散のために喫煙するという方も少なくありませんが、その原因も含め、専門機関へ相談いただくことがシンプルだと考えています。
長谷:藤沢市は「喫煙率0%」を目標に掲げています。今年4月に始まった屋内原則禁煙の試みは過料を含む罰則の規定もあります。
―メッセージを
山口:自宅勤務により家族への影響を懸念される人も増えました。家族のため、自身の健康のためにも少しでも多くの方に早く禁煙に踏み切っていただければと思います。
長谷:かながわ健康財団では「かながわ卒煙塾」という活動をしています。新型コロナとタバコにどんなリスクがあるかなどを5分ほどの映像にまとめ、ユーチューブで公開しています。禁煙は恥ずかしいことではありません。気軽に市の無料相談窓口や禁煙外来や相談に対応している医療機関、歯科医療機関、薬局へご相談ください。
禁煙ポスターコンクール 最優秀賞をポスター化し掲示
藤沢市薬剤師会(齊藤祐一会長)が主催する禁煙ポスターコンクールの最優秀賞に選ばれた善行小学校5年の吉田弥近さんの作品がポスター化され、市内の薬局約140店で展示される。
コンクールは毎年国際禁煙デーに合わせ、市内小中学生を対象に禁煙を呼びかけるポスターを募る企画で、10年以上続く。吉田さんの作品は明るい色使いや「タバコのたびに家族とはなれるの?」というメッセージ性の高さが評価された。同会は「受動喫煙の影響など禁煙周知が広まれば。薬局へも気軽に相談して」と呼び掛けた。
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