8月24日に開幕が迫った東京パラリンピック。障害のあるトップアスリートが繰り広げる祭典を前に「競技を知ってもらう契機に」と障害者スポーツ関係者の期待感も高まる。11団体からなる藤沢市障がい者スポーツ連絡協議会会長の種田多化子さん(66)もその一人。「競技者の姿が多くの人の心に届けば」と願いを込める。
「スポーツは誰もが楽しめるもの。できることに限りがある障害者にとってはより切実な意味がある」と種田さん。
32歳の時に骨腫瘍で義足生活になり、立つ動作だけでもリハビリに苦労した経験がある。「日々に精いっぱい。スポーツに取り組む余裕は心にも体にも無かった」と振り返る。
約10年前、障害者福祉センターで障害者卓球に出会った。「あなたにもできる」との声に恐る恐る参加。「ラケットが振れた、球が打てた」。気付けば夢中になっていた。失っていた、前向きな意欲を思い出させた。
障害には身体と知的、先天と後天があり、状況は違うと前置きしつつ「できる・できないで物事を判断せざるを得ないことが多いため、新しいことへの挑戦がしにくい」と種田さん。
藤沢市に限らず、全国的に障害者スポーツに適した施設が少ないため、活動団体も少ない。また、同種目であっても障害によって取り組み方が異なるため、各団体も少人数に。対戦相手を探すのも一苦労だ。「始める人は『知らなかった』『無理だと思っていた』と話す。スポーツ施設関係者であっても競技を知らない人もいた。もっと当たり前に知ってもらう必要がある」
2018年8月、障害者スポーツの認知度を高めるため、連絡協議会が設立した。国内でのパラリンピック開催決定が後押しとなり、関係者にとっては10年来の悲願だったという。
機運も高まり、国内の大会開催は、最大のチャンスとなるはずだった。
だが、新型コロナの影響で、大会延期に加え、活動自体も停止。種田さんは「支援者がいないと実施できない。最大の弱点を痛感」と振り返る。
「でも、逆境は得意なんです」と種田さん。「今できなくてもいつかできるはず。できることをできる限りがんばるのが障害者スポーツ。コロナ禍だからこそ、がんばる選手の姿がより心に響くはず」と曇りない笑顔を見せた。
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