潮の香りと波の音、「ピーヒョロロロ」という特徴的な声。江の島の風情を感じる好ロケーションだが、うっとりしすぎには要注意。「トビに油揚をさらわれる」のことわざ通り、上空からその鋭い目で食料を狙っているからだ。江の島周辺では注意を呼びかける看板も設置されているが、そもそも他の相模湾沿の地域と比較し、トビの数が多いように感じるのは気のせいか。記者が追った。
餌付け一因、全国有数の生息地に
「気のせいではありません。江の島は今や全国有数のトビ生息地」と教えてくれたのは、市のトビ対策や野生動物保護に協力する、神奈川野生動物救護連絡会の獣医師、皆川康雄さん(54)。
トビは古くから日本全国に生息。高い飛行能力を持ち、50mを軽く見通す視力、1・5mを越すこともある翼をグライダーのように広げ、音も立てずに舞い降りる。
しかし警戒心が強く、人の食料を狙うのは全国的には特殊な事例だという。「本来ことわざとは異なり、知らないものは食べません。残念ながら、観光客などによる不用意な餌付けが原因で人間の食べ物の味を覚えてしまった」と指摘する。
住処は餌となる生物の死骸の多い山や河口、見晴らしの良い高台、姿を隠せる森林を好む。江の島はこれらの好条件が揃っていることに加え、少し足を伸ばせば観光客から栄養価の高い餌を得ることができる。「通勤の便、おいしい食事、豊かな緑。良い住環境に求める条件は人もトビも一緒」と皆川さん。そうした条件が重なることで繁殖力を高め、「江の島は本来の生態系以上にトビのパラダイスと化してしまった」という。
市は今夏の五輪開催を機に、江の島エリアに7カ国語のポスターを新たに設置。トビに餌を与えないよう呼び掛けた。
襲われないためには生態を理解することが肝要だ。トビは常に背後から飛来するため、やむなく屋外で飲食する時は、後ろに壁を背負うことや、食べ物を放置しないことが大切という。皆川さんは「トビはトビらしく生きているだけ。排除ではなく、共生に向けた歩み寄りが必要」と話した。
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