視覚に障害がある人でも彫刻を鑑賞できる「手で触れて見る彫刻展」が10月21日から藤沢市民会館で始まった。1993年に始まり、節目の30回。今回も視覚障害当事者の作品を交えて約80点を展示する。発案者の彫刻家・桒(くわ)山(やま)賀(が)行(こう)さん(73)=白旗在住・人物風土記で紹介=は「誰もが楽しめる機会をこれからも続けていきたい」と話す。
藤沢市が主催し、桒山さんの作品4点と、自身が指導するアマチュアグループ「土曜会」のメンバー約20人が手掛けた仏像や家族の肖像、バードカービングなど約80点を展示。すべての作品に手で触れて鑑賞できることが、開始当時から変わらない特徴だ。
日展で内閣総理大臣賞を受賞するなど第一線で活躍する桒山さんが、30年ほど前、点字に関するボランティアに携わっていた妻の縁から視覚障害者の美術鑑賞の機会が少ないことに着目。92年に個展を開く際、作品に自由に触れてもらう試みを行ったのが始まりだった。桒山さんによると当時、展示物に触れられる彫刻展は珍しく、遠方からも視覚障害者の来場があったという。
その反響を受けて、指導するグループの作品も合わせて展示する形で年に1、2回開催。桒山さんは「当時よりも、世の中に誰もが共に美術品を鑑賞できる機会が増えてきたと思うが、展示は続けていきたい」と話す。
障害当事者も制作
作品展の中には、視覚障害があり木彫制作を続けている小原二三夫さん(69)=大阪府在住=の手掛けた6点も並んでいる。小原さんは2012年、点字新聞で同展を知り、大阪から駆け付け桒山さんの作品に触れて衝撃を受け、彫刻作りを本格化させた。「(桒山)先生が生み出した自然な人の姿の曲線を感じる作品に、やさしさを感じた」と小原さん。以来、二人の交流が始まった。
桒山さんが材料の木材と研いだ彫刻刀などの道具を送り、小原さんが1カ月ほどかけて1作品を完成させる。現在まで8年ほど続いているこのやりとりで、完成した作品は人間や鳥、抽象的なモチーフなど100点にのぼる。
出品者としてだけでなく、今回も作品に触れることを楽しみにしているという小原さんは「近年は美術館などの企画展などで似た試みはあるが、一人の彫刻家が継続して続けてきたことに意義があると感じる」と話す。桒山さんは「小原さんの二人の人が手を取り合う作品『ふたり』は指先の細部まで作りこまれていて驚くばかり。ぜひ多くの方に鑑賞してほしい」と呼び掛けた。
10月24日(日)まで。会場は第1展示集会ホール。午前10時から午後5時。入場無料。問い合わせは総合市民図書館(点字図書館担当)【電話】0466・44・2662へ。
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