「観客の前で投げるのが楽しみ。どんな雰囲気になるのか」。白い歯を見せつつ武者震いは隠せない。夏の大会を制限なく有観客で迎えるのは高校生活初。監督発案で練習場には吹奏楽応援の音源を流し、当日を想定した練習が続く。最高球速は142キロ。捕手を座らせた投げ込みにも自然と力が入る。
野球との出会いは小学2年生のとき。父の転勤で住んだ米・カンザスで、当時ロイヤルズ在籍の青木宣親選手が出場するワールドシリーズを間近に見た。「プレーの速さ、球場の盛り上がりに圧倒された」。その姿に憧れ、現地でプレーし、「自由かつ自主的に考えて動くこと」が染みついた。体格差をもろともせず、各州代表との試合も経験。身に付けた技術とコミュニケーション力は帰国後にも生き、世田谷西リトルシニア時代には全国優勝も果たした。
エースで副主将。「チームを束ね、一つでも多く勝たせることが自分の役割」と意気込むが、昨夏、苦い経験もした。2年生ながら2枚看板の一枚を任され挑んだ、綾瀬高との県2回戦。4回から登板し粘り続けるも、延長13回、タイブレークの末、10対11でサヨナラ負けを喫した。「先輩たちに勝ちをもたらせず、未だに悔しい」。必死で練習し続けた。今夏初戦の相手は奇しくも昨年と同じ対戦相手。「昨年の分を取り返して勝ちたい」。「ベスト16、一戦必勝」を掲げて、堂々と挑む。
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