藤澤浮世絵館で開催中の「江の島詣と浮世絵でみる弁財天信仰の歴史」。取材中に「この作品にはある嘘が隠れている」と同館学芸員のウェイ笑さんが教えてくれた。その嘘とは「江の島には海女はいなかった」―。
当時の江の島にいたのは男性の「海士」で、女性の「海女」の記録はないという。実際と異なる情景が描かれた背景には娯楽としての浮世絵が影響する。
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当時の江の島では「モグリ」と呼ばれる男性の漁師によるアワビ採りが主だった。男性漁は、作者不詳の「相州江ノ嶋弁才天上下ノ宮己巳年御開帳繁栄之全図」に描かれるが、それ自体が主役の作品はあまりない。
代わりに登場するのが海女だ。二代喜多川歌麿の「題名不詳(江の島開帳詣)」では、海女が観光客と交流する姿が主題となっている。「美人画は現代のグラビアの側面も。女性の色気を出すために、服をはだけた海女は適していたのでは」とウェイさんは説明する。
浮世絵には、画中の題材から別のイメージを連想して楽しむ「見立絵」という手法がある。「海女の作品も、絵の作意として男女を置き換え、当時の人が空想した美しい女性がたくさんいる『夢の江の島』を描いたのでは」とウェイさん。
両作が展示される企画展は9月4日まで。問い合わせは同館【電話】0466・33・0111。
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