4月の入学シーズン。「ピカピカの1年生」が初めての学校生活で耳にするものが校歌だ。校風や土地柄、健やかな成長への願いなど、どの学校にも在校生や卒業生にとって思い馴染みのある歌詞が並ぶ。ところで、校歌に使われる一番多いフレーズは何だろうか。湘南に象徴される土地柄、「海」や「波」「潮」などが思い浮かぶ。市内全35小学校の校歌を本紙記者がひも解いた。
海、波、潮、それとも―
《大空に/かがやく富士を/朝雲を》
四半世紀以上前、記者が卒業した鵠洋小学校の校歌はそんなフレーズで始まる。作詞したのは、児童文学作家で童謡詩人の小林純一(1911-82年)だ。30年近くを経ても自然とメロディーと歌詞が口を突く。
実は、「海」を押さえて多いのが「富士」だ。《窓から眺める/雪の富士》(藤沢小)、《仰げば富士の/白い雲》(辻堂小)など、数えた限り20近くの学校で富士が登場する。むしろ「波」や「潮」、「湘南」を使用している校歌は少数だ。
最も多かったのが「空(天)」。《はてなく広い/青空が》(大道小)、《明るい空の涯遠く》(御所見小)など20を超える学校で登場する。それ以外の歌詞では「心」「風」「希望」「緑」などが採用されていることが多かった。
校歌は著名な作詞家や作曲家に制作を依頼したり、教職員と児童自らが手掛けたりと完成の経緯はさまざまだ。
《はみ出せこころ》で始まる石川小学校の校歌は詩人の谷川俊太郎氏が作詞。《けやきのみどり/空高く》で始まる羽鳥小の校歌「道」は51年前の開校当時、児童と職員が作り上げたという。
校歌で使われる歌詞に富士や空などが多いことについて、市教育指導課では「発達途上の児童でも共通認識の情景としてイメージしやすい。色々な節目で6年間歌うものなので、そうした言葉選びをしているのでは」と推測する。
地域柄をあらわすキーワードも。羽鳥小学校の2番冒頭に出てくる「耕余」はかつて明治地区にあった私塾・耕餘塾を指す。儒学者の小笠原東陽を招いて子どもたちに学問を教えたのが始まりとされ、後の宰相・吉田茂や味の素の創業者・鈴木三郎助ら多くの政治家や実業家を輩出した。同校の田中友済教頭は「児童と職員がアイデアを持ち寄る中で、地域にちなんだ歴史を取り入れたのではないか」と話す。
そもそも校歌は法令などで制定を義務付けられているわけではないが、全35校に存在する。年月を経ても心の中で響き続ける母校の校歌。あなたには今どんな情景が浮かんでいますか―。
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