映画監督で19日、藤沢市役所で上映される映画「99歳母と暮らせば」を制作した 谷光 章さん 鵠沼橘在住 77歳
一緒に楽しめばいい
○…きつい、しんどい、大変――。一般的に暗くなりがちな介護のイメージに一石を投じるドキュメンタリー映画を5年前、発表した。「99歳母と暮らせば」。認知症になった母と自らの老々介護を記録したもので、昨年は全国50カ所近くで上映されるなど今も共感を呼んでいる。いずれ誰もが直面する老後や介護の問題にどう向き合うか。その問いにそっとヒントを差し出している。
○…作中ではベッドに横たわる母に「痛いの痛いの飛んで行け」と言いながら腰をもむ。紙で作ったひな人形を見て母が一言。「ほら、手あげて踊りよる」。昼食を食べたのを忘れてしまったり、ベッドの下で眠ってしまったり、得意のハーモニカを披露したり。天真爛漫な母とのやり取りはどこまでも穏やかだ。介護の苦労も絶えず、排泄物を便器の外につけてしまったり、ベッドの上で用を足すことも。それでも怒りをあらわにせず「頼んますよ」と優しく注意する。
○…高齢化が社会問題となって久しい一方、介護施設で高齢者が虐待されるニュースが後を絶たない。「ストレスや不満が募り、自分本位になってしまったのでは」。母は認知症が進んでも裁縫や皿洗いはできた。「できないことではなく、できることに目を向ければお互いが不快にならず生活できる」。相手を否定せず、一緒に楽しく日々を過ごすことが、幸せな介護への一歩だと説く。
○…母は一昨年、103歳で他界。現在は昭和初期に建てられた鵠沼の邸宅に一人で暮らす。名言や格言を集めるのが好きだった母の走り書きが今も壁に張ってある。その中の「あいうえお作文」にこうある。「ありがとう・イライラしない・うろたえない・笑顔で・怒らない」。介護にも通じる心構えだった。
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