地域共生社会推進のため藤沢市が取り組む「地域の縁側」事業が9年目を迎えた。一般住宅やオフィスなどを活用した交流施設が4月1日現在市内に37拠点あり、それぞれネットワークを構築している。独自の「ゆるいつながり」が、異世代・異文化交流や孤立高齢者などの社会問題解決やコロナ禍以降の地域コミュニティー継続に一役買っている。
「こんにちは。今日は何作ってるの」「こないだ教えてくれた店、良かったわよ」
25日、善行にある住宅街の一角で50代から70代まで10人ほどの女性が賑やかにおしゃべりしながら思い思いの時間を過ごしていた。地域の縁側の一つ「えん」の玄関には「だれでもどうぞ」の看板が掛かり、世代を問わず多くの市民が集う。散歩の途中に顔を出す人、お茶を飲みに来る人、利用方法はさまざまだ。
縁側事業は2014年に「社会の変化とともに失われつつある顔の見える地域の関係づくり」を目指し市がモデル事業を開始。市の事業の中でも「誰でも、目的なく集える」点が特徴で、一般に募る実施要項や大きな縛りがない。市地域共生社会推進室は「目指したのは全国のどこよりもゆるい地域コミュニティー。ルールで縛らないことで、多様な人の交流による”化学変化”を促す狙いがある」と話す。
言葉の壁超え
好例の一つが「えん」に通う下田エウニラさん(68)を中心とした高齢者同士の国際交流だ。
下田さんは日系ブラジル人。1年ほど前に夫の死去を機に親族を頼りブラジルから藤沢に移り住んだが、言葉が分からず、高齢のため地域で孤立。市に相談して紹介されたのが縁側だった。
利用者には外国文化と縁遠かった高齢者が多く、言葉も通じず、始めは両者の関係はぎこちなかったという。壁を崩すきっかけは下田さんの作ったクラフト。「かわいい」「英語だとキュートでいいのかしら」。身振り手振りで作品を褒め、作り方を聞くなどするうちに徐々に関係が深まっていった。
同施設を運営するNPOサポーターズの関係者は「ラテンな気質の下田さんに影響され、みんな明るくなった」とにっこり。独学で日本語を身に付けた下田さんが話した「みんなやさしい。I love you」の言葉に周囲の歓声が重なった。
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高齢者の孤独や孤立が社会問題となって久しい。地域の縁側の5つを巡り、事業で生まれた地域交流の可能性を探る。
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