日常的に医療的なケアが必要な子どもの母親で写真家の山本美里さん(43)=東京都=による写真展「透明人間―Invisible mom(インビジブル マム)―」がODAKYU湘南GATE6階の藤沢市民ギャラリー(南藤沢)で始まった。学校での付き添いで感じた疑問や違和感を表現した約70点を展示。あす5日にはトークイベントも予定されており、山本さんは「当事者のリアルを知ってもらえたら」と話している。6日まで。
医療的ケア児は日常的に人工呼吸器やたんの吸引が必要な子ども。全国に約2万人いるとされる。2021年に支援策を盛り込んだ医療的ケア児支援法が施行したが、受け入れる施設の不足や保護者の過重な負担などの課題は今なお多い。
同展は医療的ケア児と家族の抱える問題を知ってもらおうと、藤沢市肢体不自由児者父母の会が主催、市が共催した。
遠近法を使って我が子とたわむれる姿や立ち話に聞き耳を立てる教員。会場の市民ギャラリーには自身の姿を通じて特別支援学校の日々を描いた作品が並ぶ。
保護者負担重く
山本さんは次男が重度心身障害者で、都内の特別支援学校に就学した15年から通学に付き添い、1日6時間ほどを校内で過ごしてきた。人工呼吸器を使用しているため、送迎に加え校内で待機するのが条件だった。
もしもに備えて付き添う日々。就職もできなければ自分の時間もない。校内では学校生活の邪魔にならないよう存在感を消し、給食のときは自分が握ったおにぎりを隅で食べた。「自分は何のために生きているのか」。そんな葛藤から、一時は適応障害を発症した。
医療的ケア児の母としての孤独や苦悩。作品にはそれらをユーモアを交えながらも、ポップに表現した。「障害を題材にすると感動や命の美しさに焦点が当たりがち。自分たちは特別じゃない。本当の日常を見てほしい」と訴える。
ケア必要100人
同会の富永良子さん(42)はかつて鎌倉市にある特別支援学校まで毎日往復1時間かけて自主送迎した。「数カ月間付き添いをしなくてはならず、今思えば専業主婦ありきの保護者負担だった」と振り返る。「対象が少ないから社会から見えない。だから見える化したい」。他市で山本さんの作品を目にし、藤沢で写真展を企画した。
医療的ケア児が入所できる施設は市内や近隣になく、卒業後の受け皿も不足している状況という。在宅看護に切り替わるケースがほとんどで市によると、医療的ケアが必要な市民は現在約100人いる。同会会長の島村孝子さん(64)は「医療的ケアを必要とする子たちが地域で生活をしている。写真展を通じて、藤沢で暮らす障害児者と家族を知ってもらえたら」と願いを込めた。
入場無料。午前10時から午後7時(6日は5時まで)。山本さんと同会会員によるトークイベントは5日午後2時〜4時。会場は藤沢市役所分庁舎2階。
問い合わせはニコズキッチン【電話】0466・90・3494。
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