夏の甲子園で107年ぶり2度目の優勝を果たした慶應高校(横浜市港北区)。今大会で一躍脚光を浴びた「エンジョイ・ベースボール」の礎を築いたのは、前監督の上田誠さん(66)=弥勒寺在住=だ。
上田さんは1991年に慶應の監督に就任。2005年春には45年ぶりに選抜甲子園出場を果たし、春夏計4回、甲子園にチームを導いた。
現在監督を務める森林貴彦監督(50)や赤松衡樹部長(47)らもかつての教え子だ。準決勝からはアルプススタンドで試合を観戦。快挙を受け、「教え子が後を継いでくれた。めちゃくちゃうれしい。感無量だ」と喜びを弾けさせる。
上田さんが監督に就いた当時、高校野球は上意下達で、理不尽で苦しい練習にも堪えるのが美徳とされる風潮だった。
規律を重んじ、髪型を坊主に揃え、一様に行動する。まるで軍隊だ―。
取り組んだのは旧来の価値観とは真逆のチーム作り。選手に自らを「上田さん」と呼ばせ、雑務を下級生にやらせる慣習も一掃した。
全体練習の割合を減らし、自主練習を増やして選手が自ら考える土壌を育んだ。「当時は変人扱いされましたけどね」と苦笑する。
監督を離れて8年。慶應以外の甲子園出場校でも自由な髪型を取り入れる学校も出始め、時代の変化を感じている。その背景にあるのは「野球界の危機感」と指摘する。
90年代に全国で2千ほどあった学童野球チームが530ほどに激減。少子化やスポーツの多様化で選択肢が増えたことに加え、「旧態依然の指導も『野球離れ』が急激に進んだ原因ではないか」とみる。
「学童野球は高校野球の背中を追う。楽しさを追及する野球が勝てるとなれば、そういう方向を目指す指導者も増えてくるはず」
自身が再興した「エンジョイ」の精神は新たな高校野球像を示した。「藤沢には良い指導者が多い。ここからも時代に合った野球が広がっていってくれれば」と願いを込めた。
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