「つぶやく現代の短歌史1985-2021 『口語化』する短歌の言葉と心を読みとく」を刊行した 大野 道夫さん 南藤沢在住 67歳
短歌への情熱、形に
○…渾身の一冊を上梓した。「短歌に携わる者として歴史をまとめたい」。長らく抱いた構想を、歌人で社会学者でもある見地を余すことなく盛り込んだ。1985年から37年間の短歌史を歌人や時代背景と紹介。歌人700人への調査分析も掲載し「興味のある無しに関わらず楽しめる」と手応えを感じている。
○…文学の世界へ誘われたのは、国文学者で歌人の曽祖父・佐佐木信綱との出会い。少年時代、信綱が晩年を過ごした熱海の邸宅を訪れた。部屋に通されると「仙人のようなカリスマ」といった風貌に圧倒された。雰囲気にのまれ6畳間が異様に広く感じられたことも記憶にある。当時のことを親戚づてに聞くと「信綱は私を文学の道へ進ませたかった様子」。ただ好きな教科を尋ねられた大野少年が答えたのは「体育」。苦笑しつつ「紆余曲折あったが叶ったかな」と思い返す。
○…鵠沼松が岡で育ち湘南高校へ進むと世は学園闘争の時代。社会学へ感心が移り東京大を経て仏教系大学の社会学教員になり、歌人として活動を続けた。執筆中、短歌会の解散や結社の記念大会実行委員を務めるなど過労が重なり入院を余儀なくされた。退院後、介護施設で生活する最中、研究の命、血肉とも言える資料が破棄されるアクシデントに見舞われた。
○…それでも執念で断念することはなかった。又従兄弟の佐佐木頼綱さんが残ったパソコンを回収し、友人の協力で施設を退所。「皆に支えられて出版できた」と感謝をにじませる。現在は友人が営む市内のカフェで歌会を開くなど活動中。短歌ブームといわれる昨今。「喋り言葉でいいし、SNSでつぶやくように身近なもの」。短い言葉で表現する楽しみは、昔も今も変わらず、その魅力を伝えていく。
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