29日に演奏会を開く藤沢市邦楽協会の会長を務める 稀音家 六四次(きねや ろくしじ)さん(本名:湯本光子) 鵠沼海岸在住 78歳
古典芸能をバトンリレー
○...「1分間のあいさつを考えなくちゃ。61回目の公演が無事にできることだけを願っています」。緊張感をにじませながら胸を躍らせる。今春に琵琶・長唄・端唄の3団体で構成する邦楽協会の会長に就いて初めての合同演奏会を、市民会館で開く。自身が率いる長唄の社中では、ピアニストとして活躍する門下生も舞台に並ぶ。「幅広いジャンルの音楽に親しみ、邦楽にも興味を持ってくださる人が増えたらうれしい」。当日は2人の娘と「娘道成寺」など2曲で共演する。
○...平塚市出身。花嫁修業のひとつに箏の稽古で藤沢へ通っていたとき、「デートでごちそうになった鰻に釣られた」。23歳で見合い結婚。1男2女を育て、同居する自宅で長唄の師匠をしていた義母から長唄を習い、主婦業に専念した。「お弟子さんの昼ご飯を作ったり、おさらい会の準備をしたり。近所の人や子どもが多く集まる家でした」
○...義母の他界後、夫から後継を頼まれた。「唄い継がれてきた長唄を後世につなげていかなければ」。5代目稀音家六四郎さんや重要無形文化財保持者の稀音家光さんに師事。研鑽を積み、地元のホールをはじめ国立劇場での演奏会や江島神社での献奏、文化庁の事業などに出演してきた。「長唄は奥深い。師匠や義母のお弟子さん、周りの人に恵まれて続けて来れた」としみじみ。伝統芸能の発展や後進育成にも尽力。長唄協会から功労者表彰を受けた。
○...「力仕事なら任せて」。木や草花に満ちる庭をこまめに手入れ。自転車を走らせ、コーヒーショップへ行くのもリフレッシュのひととき。「その場にいるお客さんたちと散々おしゃべりをするの。何とかの予防になるでしょ」。家には今でも来客が絶えない。
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