戦時中に空襲から身を守るために作られた防空壕を栽培所として活用する取り組みが、天神町の「長嶋園芸」で行われている。育てているのは、コリコリした食感が魅力のキクラゲだ。オフシーズンの冬場でも食べられると購入者からは好評といい、2年目の収穫もピークを迎えた。
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奥行7m、幅2m、高さ2m。人が一人通れるほどの薄暗い地下通路にはブロック状に固められた菌床がずらりと並ぶ。
温度18℃、湿度19%。11月上旬の屋外よりも温かく湿気も多い。同園の長嶋栄太郎さん(74)は「これくらいの環境がキクラゲの栽培には一番適している」と説明する。
地下通路は戦時中に作られた防空壕を戦後、長嶋さんが父と掘り進めたものだ。「元々はウドを育てるためにスコップとのみで掘った。中学生だったので大変だった」と振り返る。
ウドは現在も春に栽培しているが、他の余ったスペースを有効活用できないかと試行錯誤。黄ニラや切り三つ葉などさまざまな植物を試し、辿り着いたのがキクラゲだった。2年前、菌床を購入し育て、昨冬に初めて出荷したところ「シーズンオフに食べられてうれしい」などの声が寄せられたという。
おいしさやきれいな見た目を保つには、空気や光の調節などが欠かせないといい、栽培所を自作。天井にはビニールを貼り外気を取り入れ、蛍光灯を上から垂らして明るくしている。
現在は1日におよそ120パック、約8・4kgをJAさがみ直営の直売所に出荷。同組合の担当者も「肉厚で歯ごたえもありとてもおいしい」と太鼓判を押し、「藤沢にはさまざまな取り組みをしている農家がいることを知ってもらえるきっかけになれば」と話す。
長嶋さんは「市内の防空壕は今少なくなってきているが、こうして平和に利用できて良かった」と笑顔を見せた。
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