六会公民館を中心に、市内各地で人形劇を披露してきたサークル「あひるの子」が先月27日、43年の活動に幕を下ろした。人形や道具はメンバーが手作りし、無償で保育園や幼稚園で劇を演じてきた。六会子育て支援センターで行われた最後の公演では、親子ら約40人がコミカルな物語を楽しんだ。
「俺様を、もっともっと強くしろ〜!」。オオカミの願いに、子どもたちがぐっと引き込まれる。人形劇サークル「あひるの子」が30年以上演じ続けているオリジナル作品「魔女もどきの花」の一幕だ。人形たちは生き生きとステージを動き、張りのある声で読まれるセリフは子どもたちにも聞き取りやすい。
この日は演劇のほかにも、「ドレミの歌」や「南の島のハメハメハ大王」などの音楽劇も行われた。全てのプログラムが終わると、参加者から大きな拍手があがった。
「あひるの子」は、同館の人形劇講座の受講者が1980年に立ち上げた。メンバーは7人。最初に演じた劇が「みにくいあひるの子」だったことが、サークル名につながっているという。
代表の北脇恭子さんは「終わった時の子どもたちの満足そうな笑顔が何よりのやりがい」と笑顔をみせる。主に幼児向けの作品で年に約40回ほどの公演を行ってきた。現在も公演依頼は多く、サークルの解散を惜しむ声は多い。しかし、メンバーは70代が中心で、かねてから高齢化が課題となっていた。「『腕が落ちたね』と言われる前に、解散しよう」と決めた。
最後の公演では、子どもの頃に劇を見たという親子も来場していた。横浜に住む30代の女性は「解散と聞いてびっくりした。昔よく見ていたので、子どもたちにもっと見せてあげたかった」と別れを悲しむ。
サークルは解散するが、人形や道具は市内で新たに人形劇サークル創設を目指す個人に引き継がれる。藤沢の子どもたちを笑顔にしてきた人形たちが、再び動き出す日が来るかもしれない。「その時は、ぜひ観客として劇を見たいですね」。北脇さんは、優しい笑みで人形たちを見送る。
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