日本最古のレーシングガレージ「つちやエンジニアリング」(葛原)が生んだ自社製GRスープラ(愛称・ホピ子)がこのほど、サーキットに戻ってきた。昨夏、富士スピードウェイで行われた国内最高峰の自動車レース「スーパーGT」第4戦の中盤、排気系のトラブルでマシンが全焼。再生するのは難しいとされたが、「もう一度、走る姿を見たい」と望むファンから約3千万円の資金が寄せられ、およそ8カ月後に復活の狼煙を上げた。
「まるで悪夢。マシンが燃え上がる光景は今も脳裏に焼き付いている」
チームの監督を務める土屋武士さん(51)は、昨年8月に見た惨状をこう振り返る。車両は金属の塊と化し、シーズンの途中でレース参戦中止を余儀なくされた。
つちやエンジニアリングは、土屋さんの父である故・春雄さんが1971年に創業した。小さな町工場がチームを発足。職人の技術と工夫でレースに挑み、2016年には年間王者に輝いた。しかし、自動車メーカーなどビッグチームがひしめく世界。ここには新たなマシンを用意する経済力は残されていなかった。
暗闇からの脱却
窮地を救ったのは、ファンの声だった。SNSで「辞めないで」「NEVER GIVE UP」といったメッセージがチームに寄せられた。
「たくさんの人に復帰を望まれている。その思いに応えるため、前に進もう」。皆の応援が土屋さんを奮い立たせた。
チーム名「HOPPY team TSUCHIYA」から取られた愛称を冠した「ホピ子復活プロジェクト」を立ち上げ、ステッカーと引き換えに1口1万円の支援を募った。すると3カ月で予想以上の資金が集まった。
それを元手に、奇跡的に残っていたメインフレームから若手のエンジニアやメカニックたちがネジ1本にまでこだわった手づくりのパーツを組み、試行錯誤の末に新生ホピ子を作り上げた。
迎えた4月の開幕戦(岡山県)。エンジン音を響かせてコースへ。結果は14位。無事完走した。翌月の会場は、あの悪夢が頭をよぎる富士スピードウェイ。3人のレーサーでつなぐ3時間レースで、23位、105周でチェッカーフラッグを受けた。ようやくチームに活気が戻ってきた。
ホピ子に刻まれた「Racing again with you!(あなたと再びレースを)」の文字。「自分たちだけのマシンではない。皆で共に成長していきたい。年内上位に食い込み、来年は勝負するつもり」と土屋さん。ファンの思いを乗せて走り続けていく。
次戦は8月3日(土)と4日(日)、富士スピードウェイで開かれる。
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