藤沢の各地区に存在する「お囃子」は、季節の祭りには欠かせないものだ。今月13日に湘南台公民館で開催された「湘南台まつり」では晴天の下、約3時間かけて今田地区の「今田囃子」と七ツ木地区の「七ツ木囃子」が披露された。子どもたちに今田囃子を教える「今田鯖神社囃子保存会」の松岡直美さんは「大切な文化を守っていくための工夫もある」と話す。
「鎌倉」「昇殿」「お囃子」の3つの曲目が現在に伝わる今田囃子を継承する保存会は、未就学児から80代の奏者まで約20人で構成されている。今田鯖神社の例大祭や正月祭り、今田自治会の夏祭りで披露。普段は月に1、2回ほど稽古に励む。かつては夜に行われていたが、近年では保護者への配慮もあり、昼の練習も増えたという。松岡さんは「鯖神社の社務所だけでなく、今田遊水地の管理棟で稽古できる」と教えてくれた。
今田囃子の起源は、江戸時代以前にさかのぼるとされる。地域社会の希薄化などにより、戦後に一度衰退したものの、1975年頃に当時の地域住民らが活動を再開。明治・大正生まれの住民や隣接する飯田地区(現横浜市泉区)に住む人々に習いに行くなどして復活した。
松岡さんが今田に移住し、子どもたちと保存会に入ったのは今から15年ほど前。当時は主に、先輩の演奏を直接見て聞いて覚えていたという。「民謡は楽譜を作ることが難しい。今の子どもに覚えやすくするために、どうしたらいいか」を考えた若手により、動画撮影や録音といった現代の技術を稽古に取り入れ、覚えやすい教え方を模索した。「お囃子を継承していきたいという気持ちがベテランの人にも評価され、いい環境が作れている」と実感する。
600年の歴史を持つといわれる七ツ木囃子でも同様に、若い世代への継承を目指している。奏者の一人である岸田信次郎さん(73)は「指導する際にも、強く言いすぎないことなどを心掛けている。次の世代につながるサイクルを作れれば」と語った。
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