藤沢市は、市内2カ所の公衆浴場を割安に利用できる藤沢市ふれあい入浴事業を2026年度で廃止の検討に入っていることが、関係者への取材で分かった。利用者の居住地区に偏りがあり、高齢者支援課は「公平性に欠ける」ことなどを藤沢浴場組合に説明。店主や銭湯ファンなどからは存続を求める声が上がっている。
月・水・金・土・日曜を「シニア&ファミリー入浴デー」とし、65歳以上の市民または同居する家族であれば、通常530円(小学生200円・未就学児100円)の入浴料を280円(小学生以下は無料)で利用できる同事業。利用者は市内の公衆浴場にある水色のクーポンに居住地区や氏名、年齢などを記し、店主に提出する仕組みだ。
同課によると、同様の補助は形を変えながらも昭和後期からあったといい、ふれあい入浴事業は2010年度から開始。今年度は約1750万円が予算計上された。
23年度のクーポン利用者は4万8210人。年度ごとに曜日の変更があるため正確な比較はできないが、22年度は4万1299人で増加した。同課は「コロナ5類移行が要因では」と分析する。
同課は10月10日、同組合員と話し合いの場を設け、26年度の事業廃止を視野に入れていることを説明。利用者の居住地区が浴場周辺に集中しており、「サービスの恩恵を受ける市民に偏りがある」と市の監査委員から指摘されたことが主な理由という。同組合員で1945年に創業した富士見湯(藤沢)の3代目店主、白石重治さん(50)は「とてもじゃないけれど、やっていけない」と不安を隠しきれない。
生活様式の変化に伴い、徐々に客足も減ったが、未だ根強いファンもいる。クーポン廃止について、富士見湯に20年以上週4日訪れるという近くに住む84歳男性は「それは困る。年金で独り暮らしだから」と嘆く。
ただ打開策として、同課は同31日に他地区から人を呼び込むイベント開催を同組合に提案。組合員は来年1月から3回、ストレッチやスマホ、認知症サポーター養成の講座などを企画予定という。同課は「利用者数の増減など費用対効果を見極めながら、話し合いを進めていく」とした。
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