ライトアップイベント「遊行の光」の仕掛け人で遊行寺の庶務執事を務める 大森 拓道さん 西富在住 55歳
寺院と地域つなぐ光
○…刻一刻と黄色みを帯びる大イチョウを前に、静かに合掌する。開山700年となる西富にある遊行寺を煌びやかに演出。構想から3年、コロナ禍で足踏み状態が続いたが、藤沢で培った人脈を生かし、関係各所と調整を重ねてきた。あすから、ようやく初の催しが実現する。「夕方に響く鐘の音がスタートの合図。いつもと違う寺の魅力を知ってほしい」
○…都内で生まれ育ち、30代を過ぎた頃まで登山に明け暮れた。妻の実家は群馬県安中市にある時宗の寺。総本山である遊行寺で1年修行し、寺を継ぐことを決意した。「今思えば恥ずかしいけれど、仏教の『ぶ』の字もなかった」と笑う。「諸法無我」「諸行無常」「一切皆苦」といった教えを学ぶうち、「お釈迦さまは素晴らしい」と膨大な量の書物を読み込んだ。その後、僧侶として群馬で過ごした。
○…3年半ほど前に遊行寺から声が掛かり、再び思い入れのある地へ。「準備はできていた」。現在は庶務執事となり、祭りごとのほか、映画・ドラマのロケ地に使われることの多い寺であるため、先方との打ち合わせなど、慌ただしい日々を送る。昨年はミュージックビデオの撮影で、桑田佳祐氏と会ったことを思い返し、「一生の思い出」と喜びを嚙みしめる。
○…午前4時に起床し、5時に法要を行う。「私が修行した頃よりも皆作法が研ぎ澄まされている」。自身も朝食の前に境内のごみ拾いや草むしり、雑巾がけに人一倍精を出す。「仲間がニコニコして仕事する姿を見ることが癒しのひと時」と慈愛に満ちた眼差しを周囲に注ぐ。「敷居の高い寺のイメージを払拭し、訪れる人の心の拠り所になれば。大イチョウの花言葉『荘厳』。そんな存在になりたい」。輝く光に願いを込めた。
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