▼湘南東部医療圏(藤沢市、茅ヶ崎市、寒川町)が、県内でも特に深刻な看護師不足に陥っている。高齢化が進む同地区では、約300人の充足が必要とされている。県内ワーストの充足率の原因を神奈川県や、地元藤沢市医師会(武内鉄夫会長)は、「同圏の学生が都市部へ就職してしまう」と指摘。「待遇が良い」というのもあるが、「都会の大きな病院で働きたい」という憧れの意識が高いのも確かだ。また、藤沢市医師会は「人口に対して看護師養成機関が少ない」とも話している。
▼人材養成に関しては、1968(昭和43)年に設立し、これまで2500人以上のナースを輩出してきた湘南看護専門学校(藤沢市天神町)がリニューアルに伴い、来年3月で完全に休校。人手不足に拍車をかける。
▼県保健福祉局は、看護師不足対策として昨年2月、「地域医療再生計画」の中で一定の方向性を示している。具体的には「院内学童保育施設運営補助事業」に約2億5千万円、「看護師等養成力推進事業」に約1億8千万円を計上し、整備を進めている。厚労省は当初、医師、看護師不足の対策費などとして、県に130億円を計上する予定だったが、政権交代、事業仕分けなどで50億円となった。県は看護師を養成する施設の建設、運営を含めた「大規模な再整備」は困難と判断、事業を絞り込んでいる。
▼医師不足は、全国的に喫緊の課題だ。県内でも主に産科医、小児科医らの不足が危惧されている。だが、患者に深く関わるのはナースではないか。看護師不足の問題には、それ以上に目を向け、手厚い体制を整えるべきではないか。
▼「命の現場」を支えるナースの大半は女性で、結婚、出産、子育てと、ライフスタイルが変化していく。「元看護師の職場復帰を」と潜在ナースの掘り起こしも必要だろう。しかし、医療現場の流れは速い。いかに、現存ナースのライフスタイルが変化しても長く働けるかが、地域医療の未来への鍵となる。それを担う若手ナース育成の場も必要だろう。国、県には、財政が逼迫する厳しい状況の中ではあるが、より一層の努力を期待したい。
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