創業間もない会社が低コストでオフィスを借りる湘南藤沢インキュベーションセンターに入居していた三浦悠介さん(35)は、5年間の契約終了を前に焦っていた。藤沢駅前は賃料が高い。しかも仕事ができる席に電源があるカフェは、席の取り合いだった。「事務所を借りられない人が他にもいるのでは。ならば自分と他の会社も使える共同の仕事場をつくろう」と考え、2015年6月に誕生したのが、南口のネクトンフジサワだ。
仕事場の提供だけでなく、厨房を備えたことが特徴で、食事のみの利用も可能。当初は「お茶のみでもいい。喫茶店みたいな感覚で」と説明し、集客していた。厨房は曜日ごとに独立希望の料理人に提供。地域情報誌「フジマニ」の編集長でもある三浦さんは、飲食店で働く人から「初期投資がかかり不安で独立できない」という話を聞き、「料理人が腕試しをする場を」と考えた。月4回この厨房に立ち顧客を作り、他の日は違う店での修業や、物件探しなどにあて、すでに4人が独立した。
コンセプトの「シェアするリビングルーム」は、実はオープン後に決まった。「仕事している人、勉強している人、打ち合わせの声が聞こえ、キッチンから漂う美味しそうな匂い。これはリビングだなと」。北口には、静かに仕事をしたい人のためにもう一店舗オープンした。
「フリーランスの場合、異業種と知り合うのが難しいが、ここなら他業種の人と知り合い、仕事に結びつくことがある」と三浦さん。働き方改革で副業や在宅ワークなど選択肢が広がる今、「何かをはじめたい人が最初に来る気軽な場所に」とニーズを感じている。
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