夕食に1品追加するように、気軽に食べられる時代が来るかも――。村岡東の湘南ヘルスイノベーションパークに入居する「インテグリカルチャー(株)」(本社東京都・羽生雄毅代表)の研究所が、「人工フォアグラ」の研究に取り組んでいる。家畜飼育の環境負荷や食糧問題解決に寄与するとして、「未来の肉」である培養肉の製造研究が注目を集めている。
様々な機材が並ぶ研究室の一角では、細長いチューブでつながった4つの透明なタンクが液体で満たされ、中では肉の細胞が培養されている。目視できるほどの大きさになった細胞の集まりを取り出し、成型すると、人工フォアグラの完成だ。
同社が開発した全自動人工培養装置「カルネットシステム」。生き物の体内での細胞生成を再現した装置で、タンクは臓器、チューブは血管の役目を果たす。元となる細胞を機械で培養する方法は、考え方としては味噌や酒、パンを造るための種発酵と同じ仕組みだという。
同社事業推進部長の鈴木健彦さん(43)は「装置さえあればいくらでも生成できる。気象条件や病気にも左右されない。宇宙など極限下での食料供給でも活躍できる」と期待を寄せる。
液体の中に浮かぶミクロン単位の小さな細胞は培養液の中で2日で2倍に。1つのフォアグラのサイズになるまでに2〜3カ月かかる。現時点では培養肉を塊にする技術が完成されておらず、ペースト状の、フォアグラのような食材が開発に適しているという。
大豆などを原料とした代替肉は日本でもすでにスーパーで並んでいるが味や栄養成分が普通の肉と異なる。鈴木さんは人工フォアグラの味を「血管がないため生臭みが減り、雑味が少なくストレート」と表現する。
培養肉における最大の問題はコスト。2013年にオランダで試作された培養ハンバーグは1枚3500万円だ。鈴木さんは「現在当社では、一般の家庭でも並べられるよう、100g600円を1つの目標に研究を進めています。今後は機械の大型化、量産化の研究を進める予定」と話す。
元となる細胞は動物性であれば、フォアグラや肉類に限らず魚介類なども生産可能だ。今後は、ホテルのレストランなどで試作提供も検討している。「藤沢ブランドともコラボし、湘南シラスや畜産農家の人が育てた肉の細胞をもとに培養するのも面白い。未来の世界は近い」と語った。
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