藤沢担当の記者として以前から気になっていた。江ノ島・江の島・江島。社名や観光施設、団体、様々な表記がある。地元生まれの記者に聞いても「地名は平仮名だけど、駅名はノだったような…」と歯切れ悪い。別の記者は「サザンの歌詞では『江ノ島』でしたね」。なぜ表記が分かれるのか、夏の自由研究に挑んだ。
向かった先は炎天下の江の島。開始早々、島の入口、弁天橋で3つの表記が並ぶ標識を発見した。神社・駅・ヨットハーバー。それぞれどんな使い分けをしているのか、早くも謎が深まる。
汗を拭きつつ石段を昇り降りし島をぐるっと一周。一見、島内の看板には「江の島」が比較的多いが、やはり様々な表記が散見される。
「表記が混在する大きな理由は、1966年に住所表記が変更されたことが理由のようです。ただ現在は『江の島』の表記に統一しています」。そう話すのは(公社)藤沢市観光協会の担当者。
同担当によると、1962年の「住所表示に関する法律」の施行に伴いそれまでの「江之島」から「江の島」に変更。その後観光促進に向けてイメージを統一するため、69年に島で話し合いが持たれ、住所表示以外の表記も「江の島」にすることに決定。以後名称を使用する場合は江の島とするよう市外にも協力を呼び掛けたという。地元商店からなる江ノ島観光会も江の島に名称変更。同協会では観光施設や書面などでは「江の島」表記に統一している。
「ノ」でなく「の」が採用された正確な理由は不明だが、戦後教育でカタカナ表記よりひらがな表記が推奨されていたことも影響すると考えられている。
島外にも足を運ぶと、66年以前から存在する社名や施設名は「ノ」が多いことが分かった。島内の江ノ島郵便局も「住所」を扱う立場でありながら、施設は「ノ」を継続している。
統一時期がはっきり影響したのが駅名だ。02年開業の江ノ島電鉄「江ノ島駅」、29年開業の小田急「片瀬江ノ島駅」、統一後の71年に開業した湘南モノレール「湘南江の島駅」と分かれる。
一方、文化史跡などは、文化庁登録に基づき「江ノ島」が多い。また「江島神社」は1047年に書かれた「江嶋縁起」に基づく漢文表記という。
島内で1789年から続く和菓子店を営む市観光協会の湯浅裕一会長は「名称の歴史は江の島の観光の歴史。文字によってイメージが変わることは、江の島の懐の広さを感じさせるね」と笑顔を見せた。
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