藤沢市が江の島を基軸にした「通年型観光」の推進に取り組んでいる。ポストコロナを見据えた観光施策のあり方について、江の島サムエル・コッキング苑を管理・運営する江ノ島電鉄(株)の楢井進社長に聞いた。
江ノ島電鉄(株)社長 楢井進氏
――苑内に温室遺構を活用した展示体験施設が完成しました。
「江の島に新たな日中の観光需要を生む契機になればと私どもとしても期待しているところです。同苑の年間来場者数は2003年オープン当初の約50万人から一昨年には約90万人まで増えましたが、夜間の観光需要が伸びた一方、日中は今ひとつでした。頂上部に新たな呼び水ができることで島全体に経済効果を生む『シャワー効果』も期待できる。今回の整備はその一環と捉えています」
――「湘南の宝石」など夜間の観光戦略が奏功しています。
「度々賞をいただいたこともあり、全国的な知名度が高まっているのはうれしい限りです。ただ、今後の観光施策としてはこれに加え日中の誘客を高める仕掛けが必要と考えています。江の島には年間800万人が訪れるとされていますが、まだそれを伸ばすだけのポテンシャルがある。埼玉県川越市はわずか数百メートルの街並みで年間700万人を呼んでいる。風光明媚な江の島なら1千万人を目指すべきというのが持論です」
「一つには交通の利便性。例えば駅と島を結ぶシャトルバスのようなものを走らせれば、アクセスが楽になり、島内での滞在時間や回遊範囲が増える。お年を召した方の足も向きやすくなるかもしれない」
――コロナ禍がいまだ市内観光に傷跡を残しています。
「当社も昨年度は電車とバス、観光事業を合わせて実に約50億円の収入が失われました。あらゆる設備投資や経費、人件費を見直しましたが、今年も相当の赤字となる予想です。ですが、江の島に関する設備投資の予算だけはほとんど削らずに残しました。ここまで盛り上がってきた江の島観光の火を消してはならないとの思いからです」
――ポストコロナに向けた観光施策のあり方についてどのように考えますか。
「江の島だけの回遊プランだけでなく、島の外、地域全体を含めた戦略の見直しが必要だと考えます。東京からの誘客、交通、チケット、当社でも取り組む『MaaS』(次世代移動サービス)など、全ての要素を加味した上でのリブランドです。それは当社だけではできることではありません。行政や観光協会、事業者が同じテーブルにつく必要がある。コロナ収束後は再び観光地間競争が激しくなるでしょう。今こそあらゆる垣根を越え、観光課題について議論すべきときなのです」
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