8日、編集室へ一本の電話が入った。「桜がね、10年間ずっと待っていた桜が咲いたんですよ」。弾んだ声の主は、鵠沼松が岡在住の八幡三郎さん(82)。2012年に根室市から寄贈され、引地川親水公園に植樹された「チシマザクラ」のうち1本が植樹してから初めて開花したという。八幡さんは根室市と親交が深く、植樹の橋渡しとなった。北方領土返還運動啓発の意味も込められた桜に「平和の知らせになる花だといいね」とほほ笑む。
チシマザクラは寒冷地に咲く低木の桜。千島列島原産で北方領土返還のシンボル。根室市の市の木でもある。神奈川県では箱根湿生公園にあるのみという。
親水公園のチシマザクラは第二駐車場近くに育つ。「北海道根室市寄贈 千島桜」の看板と標が立つが、「植樹は大々的に告知されなかった。花を咲かせてこなかったからか、来園者でも知ってる人は少ないみたい」と八幡さんは話す。
北方領土への関心契機に
きっかけは2010年、八幡さんが、内閣府北方対策本部主催の北方四島交流事業で現地へ渡ったこと。当時の根室市長・長谷川俊輔さんとの談話で「北方領土に広く関心を持ってもらうべく、シンボルの桜を寄贈したい」と話を受けた。
地元に戻った八幡さんは当時鵠沼市民センター長だった竹村裕幸さんに相談。12年11月に、樹齢7年と3年の木が計3本植樹された。
八幡さんの祖父・三次郎さんは江戸時代の1863生まれで北海道産業開拓のために渡った一人。根室、国後、歯舞などで漁業や缶詰工場、回漕業を営んでいた。八幡さんは鵠沼で生まれたが、結婚する1962年までは本籍地が根室市にあり、小学生の頃に根室市を訪れた思い出があるという。
根室市に縁深い人で組織された東京根室会に加わり、定年後は積極的に同地に関わるように。自宅から現地の小学校の卒業アルバムや什器などの資料が見付かり、根室市資料館へ寄贈したこともあった。
念願の植樹から10年、なかなか花を咲かせない桜が気掛かりだった。開花時期になると毎日のように公園を訪れ、桜の研究所に話を聞きに行ったこともあった。少し形の違う芽を見付け、花かもと心躍らせ、結局は葉芽で肩を落とすことを繰り返した。
7日、薄桃色の花を見つけた。「遠くて近い根室を感じる」と思いを馳せる八幡さん。「北方領土のことを勉強してとまでは言わない。心にとめてほしい」
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