「車いすで避難なんてできるわけない。もし災害に見舞われたら自分は諦めるしかない」。津波避難訓練を取り上げた本紙記事を読んだ当事者からそんな声が寄せられた。要支援者だと知られたくない。指定避難所はバリアフリー化されておらず生活できる環境にない。自助も共助も、公助さえも期待できない。相談先も分からず、電話を手に取ったという。藤沢市の実態はどうなっているのか。本紙記者が追った。
「できっこない」当事者苦悩
内閣府などによると、東日本大震災で高齢者の死者は全体の6割を占め、障害者の死亡率は全体の2倍にのぼる。とっさの避難が難しい人が多く犠牲になった形で、国は全国の自治体に高齢者や障害者ら要支援者の名簿作成を義務付けた。
名簿には災害時の支援を必要とするか、当事者の同意を得た上で個人情報を掲載し、自治会や民生委員に共有する。ただ、本紙に声を寄せた高齢女性のように「自治会とは言え、障害という極めて個人的な情報を知られることに抵抗がある」人も。市危機管理課によると、掲載を希望している人の割合は「7割程度」にとどまるという。
運用面での課題もある。「正直難しい。家族がいない人を誰が支援するかなど、強制力がなく役割分担まで話を詰め切れない」。市内の自治会関係者がそう漏らす。
国は昨年5月、法改正で要支援者が予め支援者や避難経路を決めておく「個別避難計画」の作成を自治体に努力義務化。5年以内の策定を求めている。だが、障害の種別や程度など当事者が置かれた状況が多岐に渡ることや支援者不足などから全国的に進んでいるとは言い難い。市も「今後庁内で検討する段階で、具体化していない」(同課)のが実情だ。
トイレ対応約3割
災害避難や被災によって帰宅が困難になった人が一時的に滞在する指定避難所。女性が指摘するバリアフリー化の実態はどうか。
市の指定避難所は市内に81カ所。うち54カ所を公立小中学校が占めるが、そのほとんどが設備面で障害者の避難生活を想定していない。「バリアフリーという考えが生まれる前の建物がほとんど。構造上、作り変えることも難しい」(市学務保健課)からだ。学校では支援が必要な児童生徒については個別に対応しているという。またトイレのバリアフリー化についても対応しているのは約3割にとどまる。
障害者は避難対策では置き去りになってしまうのか。さらに取材を進めた。
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