教育分野外の企業が不登校支援に乗り出すケースが出てきている。小田急電鉄(本社・東京都新宿区)は9月、善行駅に隣接する商業施設内にオルタナティブスクール「AOi(アオイ)スクール」をプレ開講する。鉄道に特化した学びを提供する全国的にも珍しい取り組みで、関係者は「不登校を学びの可能性に変える手助けができれば」と意気込んでいる。
発案したのは同電鉄の運転士、別所尭俊(たかとし)さん(27)と鷲田侑紀(ゆうき)さん(同)。ともに2017年に入社した若手社員で学生時代に不登校を経験した。社内の新規事業公募制度に応募したところ同社の事業として採択されたという。
スクールは小学4年生〜中学3年生が対象。特定のカリキュラムは設けず、電車の仕組みや鉄道事業者の仕事、まちづくりなどの学びたいテーマに応じて現役運転手の2人や同電鉄の関係者が実体験を交えて教える。週1回3時間のコースを火・木曜日の午前午後の計4コマ。1コースあたり定員は20人で費用は8千円に設定した。
好きに向き合う時間
別所さんは中学に入学後、不登校になり、趣味の鉄道に没頭。「当時の自分を支えてくれたのは大好きな鉄道に関わる時間だった」と振り返る。
同期で一緒にローカル線に乗りに旅行へもでかける間柄の鷲田さんにあるときこう打ち明けた。
「不登校の子どもたちの支援がしたいんだ」
鷲田さんも高校のとき、週1、2日学校に通わない「プチ不登校」を経験。小田急線で沿線を巡り、運転士の仕事や混雑状況を観察するうち学校以外にも学びの世界があることに気付かされた。「自分の場合、好きなことに向き合う時間があったおかげで入社時は同期より圧倒的に知識があった。不登校がなかったら今の自分はなかったかもしれない」
不登校が学びの可能性に変わった。そんな2人が提案したのがスクールの設立だった。
全国的に不登校が増加していることについて2人は「直近はコロナ禍の影響が大きいと思う」としつつ「学校へ行かない選択が少しずつ世間に認められて、無理して通っていた子が数字として現れているのでは」と推測する。一方、受け入れる場所や空間の認知度が低いことは社会的課題だ。
同事業では不登校を身近な問題として捉えてもらおうとインターネットで資金を募るクラウドファンディングを実施。当事者を始め、同電鉄のファンからも広く応援の声が寄せられ、250万円を超える寄付が集まった。プレ開講を控え、2人はこう意気込む。
「社会全体で学校以外の学びの場をもっと作って、当事者が胸を張ってそういう場所に通っているんだと言えるように。今回の事業がそんな世界を作る一助になったら」
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